8部分:第八章
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」
「はい。以後この名前で御呼び下さい」
「わかりました。私は松本沙耶香といいます」
沙耶香の方も名乗った。
「こちらの学園の理事長と高等部の森岡先生の頼みでこちらに参りました」
「高等部の森岡先生ですか」
「ええ。御存知で?」
「はい。同級生でしたので」
「これはまた」
意外なことであった。見れば確かに彼女と同じ位の歳である。
「ここの幼稚園の頃から一緒でした。時には同じクラスだったことも」
「幼馴染みというわけですね」
「ええ。大学で彼女は文学部に進み国語の先生となりましたが私は神学部に進み」
「シスターになられたと」
「そうです。そして今こちらにおります」
「そうだったのですか」
「昔から優しくて大人しい子でした。それに清純で」
「はあ」
沙耶香はその時その話を聞いて内心思った。昨夜その清純な心が穢されたということを。そしてそれを誘い、穢したのは他ならぬ自分であることを。だがこれもまたあえて言わなかった。
「すごくいい子なんですよ」
「よく御存知なんですね」
「理事長もそうなんです」
「理事長も」
「ええ。私達の二年上の先輩でして」
語るその言葉に憧れが入っていた。どうやら彼女はあの理事長に先輩としての尊敬の念を抱いているようである。
「昔からしっかりとして真面目な方でした。それでいて面倒見がよくて」
「そうなのですか」
「立派な方ですよ、本当に」
「成程」
表向きは参考に聞いていた。だが彼女の語り口から実はあまり参考にするつもりはなかった。どう見ても客観的なものではなかったからだ。
「理事長にもお願いされたのですね」
「そうです」
沙耶香は答えた。
「わかりました。では及ばずながら私も協力させて頂きます」
「それは有り難い」
社交辞令ではあったが少しは本気も入っていた。やはり内部事情に詳しい協力者がいてくれるというのは非常に有り難いからである。
「ではこれから何かとお話をお伺いさせて頂きますね」
「はい」
こうしてシスターミカエラと知り合いになった。とりあえず彼女と別れると沙耶香はまたキャンバスを見に回った。そしてあることに気付いた。
木が多いのである。そして花も。学校にこうしたものが多いのは何処でもそうであろうがこの学校は特にそれが多かった。至る所に木々があり、中には林みたいな場所まであった。
「林、ね」
沙耶香はそこに注目した。若し殺人事件ならば死体をこうした森や林の中に隠すこともあるだろう。ケースとしてはオーソドックスなものであると言えた。
だが彼女はそれはすぐに自分で否定した。よく考えればわざわざ学校に隠す位なら何処か山奥にでも捨てればいいことである。ここでは人目につきやすい。夜でも当直の教師達の目がある。よってこの線は捨てた。
だが
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