トワノクウ
第三十四夜 こころあてに(一)
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まったせいで、明確な憎悪を抱いているいるということ。そしてその矛先が、完全に互いに向け合わされているということです」
「六年前のように共通の敵≠ェいないんじゃ、確かに互いを憎み合うしかない。夜行が表舞台を降りたのは案外痛手だったね」
明は六年前、人と妖、両者共に共闘関係に持ち込めるよう立ち回ったと言った。
くうがあまつきに来てからも、鵺をけしかけて(かなり痛い思いをしたが)、鴇に最も近い朽葉にくうを巡り会わせてくれた。
(こんな考え方してる時点で、私の心情は明おばさんに傾いてるって分かりきったようなもの。明おばさんは六年前に鴇先生達の邪魔をたくさんして、たくさん心に傷をつけたんだから。だめ。だめよ、私)
「ざっくりまとめてしまえば、いつ人と妖の全面戦争が起きても不思議はないのが現状というわけだ」
朽葉のまとめ方は、本人の言う通り、本当にざっくりしていた。
そして、それに対して誰も反論しないほどには、的確だった。
休憩タイムとなってから、くうは持って来た重箱を開けた。
「ご開帳です〜」
「おーっ。豪勢じゃねえか」
「Wow! Sembra Buono!!」
重箱の中身は、今夜の夜食にするために、くうと朽葉の二人で腕によりをかけて作った数々の料理だ。もちろん、植物を口にできない露草や、鶏肉料理だと共食いになる梵天と空五倍子の分も、分けて用意した。
なお、これらの料理を見て天座兄弟が「飲みたい」と言ったのだが、これは菖蒲が断固許さなかった。笑顔で。――未成年のくうや芹を気遣ってのことだと分からないくうではない。
重箱の料理を銘々摘まみながら、花が咲くのは明るいおしゃべり。
その内、話題は「この場の者たちが昔、鴇とどう接していたか」になったので、くうは真剣に耳を傾けた。
「この犬女、鴇の前でだけ猫被りやがってよ。犬のくせに」
「被ってなどおらん! 鴇の前ではあれが素だ」
「はっ。どーだか。鴇に助け出されたとたんに骨抜きのデレデレで、みっともねえったらなかったぜ」
「――ははあん? さては貴様、妬いてるのか。男同士でベタベタしようものならそれこそ男色だとでも言われかねんからな。本当は堂々とくっつけた私が羨ましいんだろう」
「な……! んなわけあるか!」
ぎゃんぎゃんと言い合う露草と朽葉。
くうはただただ圧倒され、引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。
「せんせーモテモテ……」
「どうにもほっとけない人でしたからねえ」
「愛想をふりまくことにかけては人並み以上だったからね」
菖蒲と梵天それぞれから出た賛辞に、くうは苦笑するしかなかった。
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