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トワノクウ
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第三十四夜 こころあてに(一)
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「問題ない。くうのおかげで楽しい道行だった」

 朽葉は持っていた重箱の包みを置き、囲炉裏の前に腰を下ろした。

 入れ替わりに芹が席を立ち、隅で壁にもたれる梵天と、横に控える空五倍子の下へと行く。全員が揃ったので、彼らを呼びに行ってくれたのだろう。

「ほっとけ、芹、そんな奴」
「露草もこっち来いよー。端と端じゃ話しにくいぜ?」
「こ、これ芹、羽根をいじるでない!」

 わいわいと騒がしくなってくる一同を楽しく眺めていたくうの横に、菖蒲が座った。

「楽しそうですね、篠ノ女さん」

 くうは肯こうとしたが、不謹慎だと思い直し、菖蒲にだけ耳打ちする。

(お泊り会みたいだと思いまして)
(なるほど。そう思えば、殺伐としたこの集会も華やぎますね)
「そこ。コソコソしてないでさっさと始めるよ」

 梵天の呆れ声にくうは「はーい」と返事したが、菖蒲は答えなかった。





 発案者だから仕切れ、と梵天に言いつかったくうは、緊張でしどろもどろになりながら司会を始めた。

「えーとですね、本日集まっていただきましたのは、先日の菖蒲先生の就任式に現れた夜行への対策会議のためです。夜行の目的や、今後の行動を少しでも予想するために、皆さんのお知恵をお借りしたく思いますので、夜行について知っていることがある方はどんどんおっしゃってください」

 と言っても、ここに集まったメンバーは、行儀よく挙手して指名されるのを待つ学童とは違う。

 くうは溜息をつき、まず人側のトップである菖蒲に質問した。

「あれから坂守神社や各地の寺社で何か起きてませんか?」
「毎日のように、とはいきませんが、かなり高い頻度で小競り合いの報告をよく受けます。機動力は陰陽寮のほうが高いので、神社勢の我々は遠征に駆り出されないのが救いですかね」

 次いでくうは梵天を向いた。
 梵天は質問するまでもなく答え始めた。

「就任式の夜に社に突っ込んだ馬鹿どもは躾け直しておいた。ついでに他の妖にも、境界線意識を強く持つよう注意喚起しておいた」
「就任式の日の妖達は自発的に動いたんですか?」
「いや。前後の記憶があいまいな奴ばかりでね。夜行に惑わされた線がなくはない」
「同じく。主犯格を尋問しましたが、要領を得ない問答が続くばかりです」

 どちらにも明が関与し、互いをけしかけ、わざと争わせた。
 その可能性に、くうは訳も分からないまま落ち込んだ。

 叔母。父の妹。
 親戚というものを持たなかったくうにとって、篠ノ女明は初めての「血縁」で、その格はもはや「家族」であった。

 沈んでいくくうの心情にはお構いなしに、菖蒲と梵天の論は続いている。

「六年前と違うのは、人にせよ妖にせよ、就任式の夜にやり合ってし
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