7部分:第七章
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第七章
既に廊下には誰もいなかった。静まり返っていた。
「授業がはじまるのですね」
「はい」
絵里がそれに答えた。
「もうすぐ一限目がはじまりますので」
「そういえばそういう時間ですね」
懐から黒い懐中時計を取り出した。銀の鎖で繋がれた古風な時計だ。それで時間を見た。
「懐中時計ですか」
「ええ、これも案外いいものですよ」
沙耶香はその黒い時計を見せながら言った。
「アンティークな感じがね。いいのですよ」
「はあ」
「腕時計よりもこちらの方が好きなんですよ」
「左様ですか」
「時計はね、古風なのがいいです」
沙耶香はうっすらと笑ってこう述べた。
「壁にかける時計も。古い時計の方がいい」
「わりかし古風な御趣味なんですね」
「そうかも知れませんね、少なくとも時計に関しては」
そして彼女もそれを認めた。
「同じ時間を指し示すのなら雰囲気がある方がいいでしょう」
「それがお好きですか」
「他人に自分の趣味を無理強いしたりはしませんがね。私はそちらの方が好きなんですよ」
「成程」
「ところで森岡先生」
「はい」
ここで名前を呼んだ。
「先生は授業は」
「今日のこの時間は受け持ちの時間はありませんので」
絵里はこう答えた。
「松本さんと御一緒させて頂きます」
「そうですか。それでは校舎を一通り見回りたいのですが宜しいですか?」
「はい、どうぞ」
絵里はそれを認めた。
「やはり何処に何があるのかを知っておくのは捜査の基本でしょうから」
「その通りです。では行きますか」
こうして沙耶香と絵里はまずは校舎内を一通り回った。回ったのはこの高等部の校舎だけであったがそれでも全て回り終えた時には一限目が終わってしまっていた。
「申し訳ないですが」
「次の時間は授業ですね」
「はい。またお昼にでも」
「わかりました。とりあえずは一人でこの学園内を見回ることにします」
「御一人でですか」
「ええ。とりあえずはこの学園の中全てを見ておかないと捜査になりませんからね」
「わかりました。では御気をつけて」
「ええ」
沙耶香は絵里に頬笑みを返して別れた。そしてそれからその言葉通り学園内を回りはじめた。高等部だけでなく幼等部や初等部、中等部、そして大学まで回った。
回ってみれば実に広い学校であった。可愛らしく、そして気品のある少女達が学園の中に満ちている。大学に行けば行ったでそこには花が咲き乱れていた。かぐわしく、麗しい。沙耶香は仕事ながらこの学園が非常に気に入った。
「いい学校ね」
大学のキャンバスを歩きながらこう呟いた。
「可愛い女の子が一杯いて」
制服はどれもいいデザインであり大学でも学生達はいい服を着ている。グラウンドを見れば半ズボンから素足を出して
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