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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第123話 四ジゲンと五ジゲンの間にある物
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「お前、ここまで言っても分からんのか?」

 鈍いと言うか、何と言うか……。
 少しは察しろ、と言わんばかりの様子でそう続ける俺。もっとも、これでは妙に芝居じみていて、初めからマトモに答える心算がゼロだと言う事が丸分かりかも知れない。

「来週の火曜日はクリスマスイブやろうが、ハルヒ」

 朝倉さんが弁当を作って来て上げても良い、と言ったのは球技大会決勝戦の日。もし、その事を簡単に了承したとしよう。そうすると、当然、その実費に関して、俺は朝倉さんに毎日の昼食代として用意しているワンコインを払う事となる。

 俺の説明。但し、その言葉に対して、「私は別にお金儲けをする為に、お弁当を作って来て上げる、と言った訳ではないのだけどね」……と蒼髪の少女が呟いたのは素直に無視した。
 これにイチイチ反応していては、ハルヒやその他の人間を舌先三寸で丸め込めなくなる。

「しかし、今は時期がマズイ。クリスマス直前でそんな提供を受けて仕舞うと、返って高く付く可能性も低くはない」

 確かに実費は毎日ワンコインで足りるだろう。しかし、其処に朝倉さんが早起きをしてお弁当を作ると言う手間に対する報いがない。これは、素直にありがとうの言葉だけでは足りないし、済ませる訳にも行かない。

 割と誠実な人間の振りをした台詞。尚、「ふたり分のお弁当を作るのも、三人分のお弁当を作るのも手間の上で変わりはないし、別にプレゼントを期待して作ってあげると言った訳でもないのだけど」……と、苦笑混じりで呟いた独り言も素直に無視。
 ……と言うか、朝倉さん、ツッコミが的確過ぎ。

「それにな、ハルヒ」

 取り敢えず朝倉さんのツッコミは無視。そんな細かい事は、彼女も気にしないでしょう。少なくとも、朝倉さんも、この微妙な部室内の雰囲気はどうにかしたいと考えていたはずですから。
 そう考え、引き続き真面目腐った顔のまま、ハルヒに問い掛ける俺。

「そもそも、学食で昼飯を食えないような状況を作った責任の大半はオマエさんにあると思うんやけどな、()()。違うかな?」

 その問いを聞いた途端、それまで明らかに俺の事を睨んでいたハルヒが、少し視線を外した。これは明らかに彼女の中に何か後ろ暗いトコロが有る証。
 ……と言うか、本来は学食派のハルヒすらも、ここしばらくの間は弁当を作って来ていると言う事は、コイツも今の学食で昼飯を食いたくないと言う事のはず。

 そう、俺たち一年六組は見事に球技大会の野球の部で優勝を果たした。其処までは良い。それぞれの競技にひとつずつ優勝チームが存在している学校行事なのですから、そのこと自体が別に珍しい訳では有りません。
 しかし、この優勝に至る経緯がばらされる事によって、状況は少し違う方向へと進み始めた。
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