暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第123話 四ジゲンと五ジゲンの間にある物
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、様子見に徹して居る組織が多いから。
 もし、無意識の内に彼女が願望達成能力のような物を行使している、と傍から見て感じるような事態となれば、それでも尚、様子見で居てくれるかと言うと甚だ疑問である、と言わざるを得ない。

 もし、本当にハルヒが温泉旅行を望むのなら、コイツが無意識の内に現実を歪めるその前に、水晶宮の方から温泉旅行を融通して貰った方が、何処にも迷惑を掛ける事もなく、更に、周囲からは不審に思われる事もなく事態を推移させる事が可能……なのですが。

 一瞬、会話が途切れた。但し、それは重い物ではない。ましてや硬い物でもない。
 最初は少し驚いたような瞳で俺を見つめた後、まるで俺の真意を測るかのような視線で見つめ返すハルヒ。
 そして、

「別にどうしても、と言う訳じゃないけど……」

 私は、みんなでクリスマスを楽しめたらそれだけで――
 あたし、ではなく、私と、よそ行きの言葉……教師や目上の人間を相手にする時の口調に近い形でそう答えるハルヒ。

 成るほど。別に温泉……に拘っているか、そうでないのかは分かりませんが、少なくとも()()が起きる事を期待している訳ではない、と言う事ですか。
 球技大会の決勝戦が有った日の夜に言われた十二月十八日に始まった会話だけに、少し警戒して居ましたが、この感じならば、ここから不穏当な事件が始まる、などと言う事は無さそうです。

 少しの安堵と共に、綾乃さんに、今から冬休み最初の日から出掛けられる温泉旅館の手配を頼むしかないか、そう考える俺。何、水晶宮の表の顔は世界的にも有名な総合商社。社員の福利厚生施設のひとつやふたつは持って居るはずなので、其処を使わせて貰えたら良いだけ。
 そう言う施設なら、温泉は有るだろうし、カラオケの施設ぐらいは有るでしょう。

 いざと成ったら、南洋の島にバカンスとしゃれ込む方法だってある。
 もっともあの島は俺どころではない不思議の塊で、其処にハルヒを近付けさせるのは問題が有り過ぎるのですが……。

「あの……」

 既に予算の計算にまで行いつつあった俺に、躊躇いがちに掛けられる小さな声。
 そう言えば、彼女の存在を忘れていた。球技大会の時はあれほど目立って居た彼女……弓月桜だったのですが、それ以降は元の彼女に戻ったかのような音なしの構え。
 何らかの動きを開始する、と考えていただけに少し肩すかしを食らったような感覚を最初に受け、次に学内の雰囲気が俺たちの一挙手一投足に注意を払うようになって仕舞い、弓月さんの次の一手に注意を怠って居た。

 ただ、彼女は術者。球技大会の時に感じたソレだけは間違いない……と思う。
 結局、神でも万能でもない、更に多少面倒臭がりの俺に出来る事など高が知れている。その事を改めて思い知らされ
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