第十七話
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。時は待ってはくれない。お前のように自分の無力さを嘆いてる時間は無いのよ」
確かに嘆いていたって仕方がない。
寄生前の寄生根を叩くことはほぼ不可能。どっちにしても誰かが犠牲になるということなんだ。……辛いことだけど。それは仕方がないんだな。
「ふと思ったんだけど、君がこの世界に入ってくることはどうして可能だったんだい。結界に阻まれて誰も侵入できないんだろ? 」
「それは、わたしが王位継承順位一桁の王族だからよ」
「継承順位が一桁だったら可能なのか」
それ以前に一桁って何なのという疑問もあるが、おとなしく話を聞くこととする。
「一桁の王族は他の王族とは存在の次元が違うのよ。生まれながらにしてそれは定められている、完全なる序列・秩序というものなのよ。
結界というものは、そもそもわたしたち王族の一部が作ったモノで、それをこちらの世界の人間達に伝えてやっただけ。つまりはただの物真似。ならばそんなものにわたしたちが影響されるわけなどないでしょう? そしてそもそも、一桁の王族にはいかなる強力な結界も効力を持たないし、結界を無視することができるようになってるの」
「なんと便利な体だ」
「それが王族の王族たるゆえんだ。そういう存在だから当たり前のことでしょう? 理由などは所詮後付のものでしかないわ。すべては【そうなっている】だけなんだから」
ごくごく当たり前のように彼女は言う。
「ひえ」
「でも、それは過去の遺産のようなものしかないわ。今のわたしたち王族には、それ以外は特筆するような能力はないのよ。他の王族と呼ばれるもの達と力の差がそれほどない。わたしたちは先祖が作り上げた遺産を食いつぶして頂点に君臨していただけかもしれない。そしてそれを退化というのかはわからない」
その話し方はどこか寂しげだった。
「結局はやらなきゃなんないってことだよな。解ったよ。……でも俺は諦めないよ。明日は朝一番で学校に行って、寄生根を探すよ。……難しいってことはわかってるけど、何もしないで誰かが犠牲になるのは耐えられないからね。とにかくできることはやってみたいんだ」
おそらくそれは徒労に終わるだろう。でも、何もできずに誰かが犠牲になるのはもう耐えられないんだ。
自分の無力さはわかってる。それでも何かをやらずにはいられない。
そんな俺を悲しそうな顔で王女が見ていたが、俺は何も言わなかった。
唐突に携帯が鳴る。
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