6部分:第六章
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第六章
黒い髪を後ろで束ねておりその顔立ちはややきつめだが非常に整っている。濃紺の地味でおとなしめのスーツに身を包み黒いハイヒールを履いている。背も高く非常に美しい女性だが何処か余裕を感じさせないものがあった。
「おはようございます」
こちらに顔を向けて挨拶をかけてきた。そしてまずはその手に持つコーヒーカップを机の上に置いた。
「昨日お話したことですが」
「こちらの方ですね」
「はい」
絵里は頷いた。
「おいで頂きました」
どうやら絵里は事前にこの女性に話をしていたらしい。沙耶香は二人のやり取りからそれを察した。それを見てここは絵里に合わせることにした。
「はじめまして」
沙耶香はそれを受けて頭を垂れた。
「松本沙耶香と申します。探偵です」
「探偵さんですか」
「はい。こちらの森岡先生にお話をして頂きこちらまで参りました」
ここは身分を偽った。そのうえで名乗った。
「そうなのですか」
「宜しくお願いします」
「わかりました。私はこの学園の理事長を務めています」
彼女は言った。これは予想通りであった。
「神楽坂由梨と申します」
「神楽坂理事長ですね」
「はい」
彼女は頷いた。
「数年前からこの職に就いております」
立ったまま言った。座ることがないのはこちらに配慮しているのであろうか。
「そうなのですか」
「はい。ところで事件のことは御聞きですね」
「ええ、既に」
沙耶香は答えた。
「森岡先生から」
「そうなのです。今それで学園内に不穏な噂が流れております」
そう語る理事長の顔に暗い影が差した。
「変質者が学園内に潜んでいるとも。また攫われているとも」
「どちらにしろ剣呑な話ですね」
「正直こちらとしてもどう対処していいのか困っているところでした。そこでこちらの森岡先生が知り合いにいい探偵の方がおられるとお話して下さいまして」
「はい」
ここで絵里が応えた。二人のやり取りを見ているとどうやらこの理事長はその顔立ちから考えられるよりも少し若いらしい。絵里より少し上といったところだろうか。
「それで森岡先生に無理を申し上げて来て頂きました。お願い出来るでしょうか」
「はい」
沙耶香はまずは頷いた。
「喜んで」
「左様ですか。有り難うございます」
理事長はそれを聞いてその細い切れ長の目を微かに綻ばせた。
「ですが条件があります」
「それは」
だが沙耶香のこの言葉にすぐにその目を元に戻した。
「捜査に関してです」
沙耶香は言った。
「この件に関しましては私に全てお任せして頂きたいのですが」
そう言いながら理事長を見た。そして反応を見守った。
「如何でしょうか」
「はい、それでしたら」
理事長はそれに応えて言った。
「宜し
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