24部分:第二十四章
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術が。消えてしまうのは残念なことだけれど」
「さっきも言った筈よ」
「芸術は味わうもの。見ているだけでは詰まらないのよ」
影もまた本体と同じ考えであった。
「それをわからなかったのが」
「貴女の間違いね」
後ろから、そして前から沙耶香は仕掛けた。影の沙耶香は跳んだ。そして剣を振り下ろす。
本来の沙耶香は剣を横に払った。二人は同時に何かを斬った。
シスターを斬ったのは間違いなかった。だがシスターの身体には傷一つついてはいなかった。
シスターはゆっくりと倒れ込んだ。そして前に伏してしまった。
「これでいいわね」
「ええ」
二人の沙耶香は互いの顔を見て頷き合った。
「彼女に憑いていたものは斬り払った。これで全てが終わりね」
「そうね。けれどそれは何だったのかしら」
影が本体に問うた。
「彼女に憑いていたのは」
「妄執よ」
「妄執」
「そう。それが彼女を狂わせていたのよ」
「それがあまりにも大きくなって。彼女を支配していたのね」
「そうね。だからあんな術を使えるようになった」
「妄執が全てを支配していて」
影は本体の言葉を聞き考える顔になった。
「まるで魔物みたいね、その妄執は」
「実際に魔物だったのでしょうね」
本体もそれを認めた。
「だから。ここまでなったのよ」
「けれど今その妄執も滅んだ」
「これで人形にされていた娘達も元に戻るわね」
「そして彼女自身も」
影はシスターを見下ろして言った。
「一件落着ね」
「そうね。それじゃあ戻ろうかしら」
本体は影に対して声をかけた。
「一つに」
「そうね」
影はすっと笑った。そして本体に歩み寄って来た。
「また一つになりましょう」
「ええ」
影は本体の顔に己の顔を近付けた。近付けながら目をゆっくりと閉じる。
そして軽く接吻をした。それと同時にゆっくりと、霞の様に姿を消していく。影は次第に沙耶香の後ろに戻ってきた。
「これでよし」
沙耶香は影が完全に戻ったのを確認して言った。
「全ては。終わったわね」
シスターを抱きかかえる。そして彼女を抱いたまま屋上を後にする。こうしてこの学園を覆った暗い霧は消え去ったのであった。
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