24部分:第二十四章
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たけれど」
「我儘ね」
「我儘はね、女の特権なのよ」
これは沙耶香の持論であった。
「少なくとも男のそれよりは許されるわ」
「許す許さないは相手が決めることよ」
「じゃあ決めさせてあげるわ」
沙耶香はまた人形を切った。氷になり砕け散る。
「貴女に勝ってね」
「まだ勝てるつもりなのが凄いわね」
シスターはその言葉を聞いてまた笑った。
「私に指一本触れられていないのに」
「それは簡単に出来るわ」
「嘘仰い」
だが彼女はそれを信じようとはしなかった。
「その有様で」
「言っておくけれど傀儡を使うのは貴女だけではないわよ」
「どういうことかしら」
それを聞いたシスターの眉がピクリと動いた。
「そのままよ。私も傀儡を使えるの」
「人形かしら」
「少し違うわね」
だが沙耶香の返事は素っ気無いものであった。
「それはね。こういうことよ」
突如としてシスターの後ろから声がした。
「!?」
「気がつかなかったかしら」
後ろの床からもう一人姿を現わした。それは何と他ならぬ沙耶香自身であった。彼女は床からその黒い身体を出させてきたのであった。
「私の気配に」
「馬鹿な、こんなことが」
「そう思いたいでしょうね。けれどこれは現実のことなのよ」
沙耶香は後ろをとった。その手にはやはり氷の剣があった。
「私が今ここにいることは」
「それでは今私が目の前に見ているものは」
「そう、私の傀儡」
「よく見て御覧なさい、私を」 シスターの前にいる沙耶香も口を開いた。笑みが誘い込む様なものになっていた。まるで魔界に引き込もうとする悪魔の様な笑みであった。
「私の影を」
「影・・・・・・まさか」
「そう、そのまさかよ」
後ろにいる沙耶香が言った。
「私は影」
次に前にいる沙耶香が。見ればその沙耶香には影がなかった。そして後ろにいる沙耶香にも。太陽の下にありながら影がなかった。
「影を傀儡に」
「ええ。傀儡は人形だけではないのよ」
「影も使えるの」
二人の沙耶香は同時に語った。
「それに気付かなかったとは。迂闊ね」
「参ったわね。こんなことを仕掛けて来るなんて」
「考えたわ、私も」
「そう、私も」
また二人の沙耶香が言った。
「どうしたら。貴女を出し抜けるかを」
「そして。考えたのがこれだったのよ」
「傀儡を使う私に対してあえて傀儡を見せたのね」
「ええ」
「そういうことよ」
二人はそれを認めた。
「そして貴女はそれにかかった」
「逃れられぬ罠に。さて、いいかしら」
二人はシスターに尋ねてきた。
「覚悟は」
「こうなっては覚悟するしかないようね」
シスターは諦めた様な笑みを浮かべて頷いた。
「いいわ。やりなさい」
そして言った。
「私の芸
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