巻ノ七 望月六郎その十三
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「馬は乗れぬ」
「その大きな身体で乗れる馬もないであろう」
「そのこともあってじゃな」
「御主は馬に乗れぬな」
「馬術は苦手じゃな」
「どうもな、馬はな」
「そうじゃな、忍術と馬術は違う」
幸村も言う。
「御主達は皆忍の術や他の術を学んでおってじゃな」
「はい、馬術は」
「馬を養うにはかなり銭がかかりますし」
「馬自体も高うございます」
「ですから馬術は」
「しておりませぬので」
「そのことは仕方がない、真田家も馬に乗れる者はあまりおらぬ」
幸村は真田家のこのことも話した。
「上田ではな」
「馬に乗る者は」
「あまりいませぬか」
「武田といえば騎馬隊ですが」
「真田家は違いましたか」
「そうじゃ、上田の周りも山ばかりじゃ」
馬は山の中を進むには向いていない、源義経の鵯越の様な話があるにはあるがそれでもなのである。
「だから馬に乗れる者は少ない、それにやはり真田家は貧しい」
「多くの馬を養うだけの銭もですか」
「ありませぬか」
「そうじゃ、だから馬のことは気にするでない」
このことはというのだ。
「山での戦が主じゃ、しかし拙者はな」
「殿は、ですな」
「馬に乗ることが出来ますな」
「うむ、武芸は全て学んでおる」
十八般全てをというのだ。
「だから馬にも乗れる」
「ですか、では」
「馬はお願い申す」
「我等はその殿に付き従いますので」
「出来れば御主達も馬術を身に着けて欲しいが」
しかしとだ、幸村は現実から考えて述べた。
「やはり山じゃからな」
「馬よりも己の足ですな」
「上田では」
「そうなる、山に慣れてもらいたい」
上田においてはというのだ、こうしたことも話しつつ根津も加えた一行は近江に入った。そのうえで三好伊佐入道に会に向かうのだった。
巻ノ七 完
2015・5・24
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