第2章 夜霧のラプソディ 2022/11
18話 死を描く狂気
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敏捷値に偏重した女性プレイヤーの両名の後ろを走りつつ、大樹を駆け下りる。レイ達の拠点には向かったものの、結論には扉が施錠されていて室内を窺い知ることができなかったのである。しかし、アルゴの持つ《聞き耳》スキルによって留守であることが知れると、議論も持たずに森へ向かったと考察し、脱兎の勢いで後を追うに至ったわけである。
別に街から出ていなければ問題はないのだが、俺が見た彼女達の切迫感は鬼気迫るものだったと思う。よくよく思い返せば森へ出向く前に例の重装備プレイヤーからエルフについてのリスクは聞かされていた筈なのである。アルゴの得た情報である《真偽の定まらないレアアイテム》の情報を加えて考慮すれば、彼女達は森へ向かわねばならない理由があると結論付けた為である。
それと室内には店売りの食品を含めた嗜好品系のアイテムが全く見当たらなかった。アイテムストレージに全て仕舞い込んでいる可能性も捨てきれないが、その割に菓子折りは素直にテーブルの隅に置いていたところを見る限り、これといって拘りを持っているようにも思えなかった。察するに、買い物で外に出たのは相当前なのかもしれない。いや、あくまでその確率があるという程度なのだが、考慮して損にはならないだろうと思う。かくして、不確定ながらも様々な要素を考慮して、森の捜索を断行するに至った次第である。
「それってホントなの!?」
「レファレンスも確認した。間違いなく誰かに貼り付かれてたらしい」
移動中の最中、驚くヒヨリに返答する。俺から話したのはレイ達に話を聞きに行ってからの帰りにあった出来事。誰かに見られているような感覚、追いかけられているような焦燥感、その気味の悪い何かから逃れようと使用した《隠蔽》スキルは、そのシステムの外から齎された警鐘を奇しくも現実のものであったらしい。
隠蔽スキルは、高レベルモンスターの目を掻い潜ったりすることで熟練度が効率的に上昇するが、実はこのスキルを持ったプレイヤーに《能動的に追いかけられた》場合でも熟練度は目に見えて上昇するのである。ベータテスト時代に《とあるプレイヤー》に追い掛けられたことで発覚した事実であるが、先程の誰が鬼とも知れない追いかけっこは正しく《相手がいた》かのようなスキル熟練度獲得のメッセージが記されていたわけだ。
「だとしたら、そのPKにリンちゃんが目を付けられタ、とも考えられるんじゃないカ?」
「そ、そうだよ! 危ないよ!?」
「仕方ないだろ。向こうから一方的に因縁つけてきたようなもんだぞ」
正直、街中での隠密状態は褒められた行為ではない。しかし、俺の隠蔽スキルの熟練度を以てしても看破され、且つ追跡してくるというのも尋常ではない何かを感じる。根拠こそないものの、それこそ相手が人間である可能性が強まっている以上は、シス
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