2部分:第二章
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ある。
光と闇のコントラスト、銀と黒が複雑に交じり合う中に今二人は立っていた。沙耶香はその横に絵里をしかと置いていたのであった。
「東京の方ですよね」
「そうですが」
絵里は沙耶香の言葉に応えた。
「ですが銀座には」
「そうなのですか」
沙耶香はそれを聞き微笑んだ。今度は優しい微笑みであった。
「来られたことはありませんか」
「父や母の御供で。昼には来たことがありますが」
どうやらかなり育ちのいい女性らしい。銀座は高級な店が立ち並ぶ場所でもあり、昼は所謂金持ち達が楽しげに買い物に興じる場所なのである。昼と夜で違う顔なのは人間と同じである。昼は淑女、夜は娼婦といったところか。
「ですが夜は」
「どうですか、全然違うでしょう」
沙耶香は絵里の耳元でこう囁いてきた。
「この街は。昼と夜とで」
「はい」
絵里はその言葉に頷いて応えた。
「まるで。別世界です」
「夜のこの街に来られなかったのは何故ですか?」
「悪い場所だと思っていたからです」
絵里は言った。
「悪い場所ですか」
「はい。お酒といけない遊びがはびこっている。そんな場所だと思っていました」
「確かにそれはありますね」
沙耶香もそれは認めた。
「ここはそうした街です」
「ですから今まで足を踏み入れなかったのですが。夜には」
「けれど私に会う為にここにやって来た」
「そうです」
彼女は答えた。
「貴女なら。話を解決できると思いまして」
「ではそのお話。ゆっくり聞かせて頂きましょう」
「はい」
二人はそのままある高級ホテルへと入った。ロビーに行くとボーイ達が沙耶香の顔を認めて頭を垂れてきた。どうやらここは彼女にとって馴染みの場所らしい。
「こんなホテルで」
「何、大したことはありませんよ」
沙耶香は涼しい顔でこう答えた。
「ここのオーナーとは少し顔馴染みでしてね」
「はあ」
絵里にとっては何か信じられない話であった。
「部屋はもう決まっています。行きますか」
「ここでお話するのですね」
「その為にご案内したのですが」
「わかりました。それではお願いします」
「ええ」
沙耶香は頷いた。そしてエレベーターに入りそこから部屋に向かう。この時絵里は気付いていなかった。今自分が生まれたままの姿で漆黒の姿を持つ餓えた野獣の前にいるということを。知らなかったのであった。沙耶香は話をするだけが目的でここに彼女を誘ったのではないということを。世事に疎い深窓の中に住む彼女は知らなかったのだ。
「さてと」
部屋に入りキーをロックすると沙耶香はまず自身のネクタイを緩めてきた。
「あの、松本さん」
薄暗い部屋の中は広く、豪奢な装飾がその中で見られた。絵里はその中央に立ちネクタイを揺るめた沙耶香に尋ねた。
「何
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