暁 〜小説投稿サイト〜
ランス 〜another story〜
第1章 光をもとめて
第5話 桃色の巨凶
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うやら、今日一番の金の動きなのだろう。

「さぁ、どっちに賭ける〜?」

 ぐるぐると回る玉を見ながらそう訊く葉月。明らかに緩んでいる顔。

「そうだな。赤で」
「よっしゃーー」

 意気揚々とルーレットを見る葉月。徐々に緩まっていき勢い。
 ユーリは、その玉をじっと、見ていた。その視線は鋭くなっていく。

 そして……、玉が止まろうとするその瞬間。

『煉獄』

 ユーリは、決して言葉を発した訳じゃない。ただ、視線を玉に向け、睨みつけたのだ。
 殺気を1点に集中させる。周囲に漏れずにただただ1点の玉に。

「っっ!!!」

 それを受けた玉は、突然跳躍をしだした。

「……は?」

 葉月は、突然有り得ない現象が起きたのを見て、仰天した。玉は、その後もまるで生きているかの様に動き回っていて、そして大金が動いた事で集まってきた周囲の客たちも、同時に響めく。

「ん? 地震でも起きたのかな……? 最近は多いからな」

 ユーリはそう言うと、素早く頭上にある鮮やかな照明器具に向かって、煉獄を、気合を飛ばした。僅かな勢いで 揺れる照明器具。

『お?? ほんとだ。全然感じないけど。揺れてんだから』

 客の1人がそう言うと、口々に皆が納得していった。
 そうこうしている間に、あの玉は、まるで何かに詰まったのか、と思える位置で固まって止まっていた。

「……ふむ。無効、だな。この場合はどうするんだ? 公平(・・)なルーレットでは」

 不敵な笑みを見せながらそう言うユーリ。葉月は、何かを察したのか。

「わ、わかりましたー。おおきな勝負が出来そうだったんですがー、ざんねんだったねー。ひょっとしたら、おにーさんが 大金持ちになれたかもしれないのにねー」

 引き攣りながらもそう言う葉月。

「さて」

 ユーリは、殺気を飛ばすのをやめた途端に、力が抜けたのだろうか? 玉はよろよろと落ちてきて、黒の中に収まった。まだ、何も触っていないのにも関わらずだ。

「ぁ……」
「随分と珍しいのを、カジノの玉にしている様だな。成る程、ぷちまるの亜種か。よく調教できたモノだ」
「う……ぐっ……」
「……良かったな。客の目も、ここのスタッフの目も今は逸れている。……知ってるのはオレだけだ」

 決して笑っていないユーリの顔。それを見た葉月は、察した様だ。何か別の目的があるということに。

「な、何が目的……なの?」

 びくびく、と震えているのが判る。ここからは、ピンクな妄想が広がる18禁ワールドが開催されるのが普通?だろう。
 でも、生憎だがそんな展開にはならない。

「訊きたい事がある。……このカジノは富みを生み出す場所だ。リーザスの重鎮とも繋がりが深いだろう?
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