受難‐サクリファイス‐part2/ネクサスVSゼットン
[5/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
「今は戦場から退避して戦力を蓄えてからの方がいい。お前たちの力じゃ勝てないことはもうわかっているはずだ」
「…だが…」
ヘンリーはシュウから視線をそむける。その目の奥に映っていたのは、後ろで息絶えた赤い竜だった。その瞳に宿る感情にはシュウは良く覚えがある。大事な何かを失った悲しみだ。
「その竜、お前の?」
「…あぁ、こいつは僕の相棒だ。さっき僕が助かったのも、こいつのおかげさ」
主思いの、友達思いの竜だったのか。シュウはその竜に対して尊敬の念さえも覚える。
「だったら、その命は大事にしておいた方がいいはずだ」
「いや、この命は仲間やこいつの敵を討つために使わなくては…!!」
しかし、ヘンリーは話を聞かずに、傷が治ったばかりの体を引きずって戦線復帰しようと歩き出す。しかし既に、アルビオン側の敗北は一目瞭然だ。アリが恐竜に向かったところで勝ち目など無いように。
「…すまん」
ドゴッ!
「う…!?」
怪我人に危害を加えるのは気が進まなかったが、このまま見過ごしてもこいつは無謀に突っ込む。それを予想したシュウはヘンリーの首の後ろを思い切り手刀で叩き落し、ヘンリーを気絶させ、竜の遺体の近くに寝かせた。
「旦那、自分で言ってたさっきの言葉…あの金髪エルフの姉ちゃんからも言われたんじゃなかったんですかい?」
命を大事にしろ、とはよく言うものだ。地下水はシュウの言葉が、まさにシュウ自身が自分のことを棚上げしていることを指摘した。
「…俺はいい。そんな資格はない」
「おいおい、棚上げッスよそいつは?」
「…承知の上だ」
自分でも自覚するくらいの愚か者だが、それがわからないほど馬鹿じゃないとは自負している。わかっている。わかった上で、自分は戦うのだ。自分以外の、誰かを守るために。たとえその果てに自分の命が消えようとも、誰かを…守らなければ…。
シュウは地下水をホルダーに押し込むと、エボルトラスターを取り出し、鞘から引き抜いた。
「どうして引き止めないの!もし戦ったら…死ぬかもしれないのに!」
「テファ」
去り行くシュウを、今度は引き止めることもできなかった。どうして彼を危険な場所へ行かせた。そのことを反論しようとテファが声を荒げる。当然の反応だな、とマチルダは思いながらも、彼女に言う。
「止めておいた方がいい、そう警告をした上であいつは行った。自分の生き死にについても自分で責任を負うことを、自分の意志で決めたのさ。あたしたちにできるのは、可能な限り手助けをするか、邪魔にならないように見ることか…そんなもんだよ」
「…そんなの…そんなの…やっぱり納得できないよ。私たちの都合で呼び出して、危険な目にあわせてきて…」
「テファ…」
「シュウに…このまま戦うためだけの人のままでいてほしくないのに…どうして…!」
テフ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ