受難‐サクリファイス‐part1/襲来!最強怪獣
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襲った奴の発言。その果てに、テファは遂に知ってしまった。できれば知られたくなかった秘密の一つを。
だとしたら、自分は責められるべきだ。奴は俺を狙ってきていた。
「…すまない。俺のせいで村を巻き込んでしまった」
「村のことは怒ってないわ。みんな助かったんだし…村を襲った人たちは、私も狙ってきたんだから」
「何…?」
「虚無の力、信じられないけど、私にそれが宿っているのね。言い回しが漠然としていたものだったけど、きっとそうなんだと思う。今でも信じられないけどね」
この世界において人間とエルフは宗教的な事情もあって深い禍根が残り、対立している。特に『虚無』にいたっては、エルフにとっては『悪魔の力』として認識されていたことと母から聞いたと、テファは告げた。いくら王家の血を引くまさかハーフエルフである自分にそんなものが宿っているなど信じられなかった、とも自嘲を混じらせたように言った。
(やはり…それで奴は…)
シェフィールドが村を襲った理由の二つ目が、改めてはっきりした。自分だけじゃない。彼女もまた狙われているのだ。
「それよりもあなた自身のことよ」
「俺…?」
「どうしてそこまで戦うの?人を守る、それは確かにすごく立派なことだと思うし、私もそのこと事態は否定しない。でも…」
自分の半身を包む毛布を握り締め、彼女は唇をかみ締めながら、テファは再び叫ぶ。
「あなたの場合、どこか異常さがある!まるで、自分から傷つくのを望んでいるみたい!」
「…異常?」
シュウは逆に、テファの言い分に目を細めた。
「そんなことはない。普通だ。俺は防衛組織の人間だからな。痛みなんか一々恐れている場合じゃない」
「…!」
人の話を聞かんとばかりの、次に飛んできた彼の言葉はテファにとって許しがたい言葉だった。
「本当に普通といえるのかねぇ…」
それに呼応するかのように、呆れ口調で飛んできた声が二人の耳に入る。マチルダがすでに階段を上がってここまできていた。
「マチルダ姉さん…」
「話は聞いてたよ。テファがあの伝説の虚無の担い手…か。それなら系統魔法が使えなかった説明はつくけど…」
迷惑なものだ、とマチルダは心の中で完結させた。ハルケギニアにおいて伝説とされている始祖ブリミルの力、零番目の系統『虚無』。ブリミル教徒で占められているこの国において、受け継ぐことができればさぞ立派かつ神聖に見られるかもしれないが、マチルダからすればはた迷惑の何者でもなかった。まして、自分の義妹にそんなものが受け継がれていたとは思いたくも無い。おかげで先日のような事件が起きたのだから。できれば普通に系統魔法が使える体質であって欲しかったものだ。とはいえ、それは今更な贅沢だろう。そんな現実であって欲しかったなどと嘆けば、ハーフエルフであるテファの生まれさえも否定しかねない。
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