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黒魔術師松本沙耶香  人形篇
18部分:第十八章
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第十八章

「ライト、いったわよ」
「任せて」
 女の子の掛け声が聞こえてくる。そして一人の少女がライとフライを処理していた。
「ナイス!」
「これ位ならね」
 ライトを守っていた女の子がこう言葉を返していた。沙耶香はそれを見て思った。
(あれはそうそう簡単に取れる場所じゃなかったけれど)
 先程のライトフライに関してである。
「よく取れたわね、さっきのは」
「貴女もそう思われますか?」
 ここでそのグラウンドの方から声がした。
「おっと」
 不意に声に出してしまった。その迂闊さに舌打ちしながら声がした方に顔を向けた。
「さっきのは。そうは取れないですよね」
「ええ、まあ」 
 その声の主に応えた。見ればこの学園の制服を着た少女である。茶色がかった髪をショートにした元気のよさそうな少女である。栗色のはっきりとした目に日に焼けた明るい肌を持っている。
「貴女は」
「斉藤玲子といいます」
 少女はそう名乗った。
「斉藤さんね」
「はい。ソフト部のマネージャーです」
「このソフト部の」
「去年入部して。そのままマネージャーをやってます」
「そうなの」
 二年であるということがわかった。
「ところでさっきのライトフライですけれど」
「ええ、それね」
 またその話になった。沙耶香はその玲子に顔を向けた。
「やっぱり。そうは取れませんよね」
「下手なライトだったら無理ね」
 それは野球でもわかることであった。沙耶香は野球も観るのでそれはわかった。
「いいライトだと思うわ」
「有り難うございます」
「あれならセンターもいけるんじゃないかしら」
 外野の守備はまずはセンターに最も守備のいい者を置くのが普通である。その次にライト、そしてレフトである。かってはライトはそれ程重要視されていなかったが振り遅れや左バッターの増加、そしてライトゴロを狙うという意味から重要視されはじめた。イチロー等がそのいい例である。
「センターはもっと凄いんですよ」
「そうなの」
「うちの外野手じゃ一番です」
「そんなにいいのね」
「彼女で外野の殆どを守れる程です」
「頼りにしてるのね」
「ですからセンターをやってるんですよ」
「いえ、貴女が」
 沙耶香はここで彼女にこう言った。
「そのセンターやってる娘を頼りにしてるのね」
「はい」
 気持ちよくその問いに頷いてきた。
「彼女のおかげで。かなり守備がよくなりましたから」
「そうなの」
「それまでうちの外野の守備って寂しいところがあったんですよ。けれど彼女が入ってくれて」
「その娘何年かしら」
「一年です」
 玲子は答えた。
「けれどすぐにレギュラーになりました」
「凄いわね、それは」
「小柄ですけれど脚も速いですし肩も強いし。おまけにサ
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