17部分:第十七章
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第十七章
「面白いことを言うわね」
沙耶香は擦れ違った後で一人立ち止まり呟いた。
「どうやら私と近い世界にいるようね」
そう呟いて笑った。そして妖気を探った。
妖気はまだその場に強く残っていた。だがそれは次第に遠のいていた。
「前に」
シスターの通り過ぎた方とは逆に。遠のいていた。
「しまったわね」
それを感じて舌打ちした。もう少しであったというのに。だが彼女は諦めたわけではなかった。妖気の存在は掴んだ。次に逃さなければいいと思ったからである。
分身を消し今度は自分の足でまた学園内を歩き回った。その結果妖気が感じられたのはそこだけであった。他には何処にも感じられなかった。このことから彼女は高等部にこそ謎があるのだと目星をつけるようになっていた。
その日はそのまま捜査と資料の調査を進めた。失踪した学生達のことは頭に入ったがそれ以上の進展はなかった。だが妖気を察したのは大きかった。彼女はその妖気についても思案していたのであった。
妖気と一口に言っても何種類もある。黒い妖気もあれば青い妖気もある。そして赤い妖気も。
そして今回の様な赤紫の妖気も。これは女の妖気であった。しかも妖術を使い、邪な欲望に支配された女の妖気である。一概には言えないがその多くは性欲である場合が多い。
つまりこの妖気の持ち主は性欲に支配されている。それも普通ではない形の。これでかなり制限される筈であった。
「けれどこの場所ではね」
沙耶香は教会の奥のあの当直室で呟いた。ここはカトリックの学園である。そして女学校だ。他ならない沙耶香の様に同性愛の話は昔からないわけではないであろう。そして同時にカトリックの聖職者は婚姻を禁じられている。同性愛もだ。そこを誘惑するのが沙耶香であるが普通はそれは抑圧されている。その為歪になる場合も考えられるのだ。そこまで考えて沙耶香はあることに気付いた。
「聖職者」
そこであった。そして女性となれば。一つしかない。
「シスターね」
彼女はまた目星をつけた。あの妖気の持ち主はシスターであると。そう考えていたのだ。
だがまだ断言は出来なかった。まだあくまで可能性の一つに過ぎない。確信ではないのだ。その為とりあえずは高等部に出入りしているシスターについて調べることにした。まずはそれを聞くことにした。
「高等部に勤めているシスターですか」
「はい」
シスターミカエラにそれを尋ねたのである。沙耶香は彼女を見ながらこのシスターではないと思っていた。
妖気の兆候が全くないのである。そのオーラは白く、清浄であった。趣きも同じであり、大人しく謙虚でありまさしくシスターといった感じであった。彼女でないのはすぐにわかるものであった。
「どの様な方がおられますか」
心の中のそうした読みを隠して尋ねた
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