プロローグ
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「わかったよ……わかったよ! 行けばいいんだろ行けば!」
もうどうにでもなれ! 死んでも知らんぞ!
俺は用意された最低限の手荷物をもって、玄関を出た。
するとそこには見知った顔の人たちが集まっていた。
その中にはなんと、仕事で忙しいはずの伯父の姿まであった。
「息子よ、しばしの別れだ。お前が強くなって戻ってくるのを待っておるぞ」
「私もよナハト。厳しいかもしれないけど、頑張るのよ」
父と母がそう言った。
俺は父から悪魔の駒が入った箱を受け取った後、最も尊敬している伯父の『ディハウザー・ベリアル』さんの元へ歩いて行った。
「久しぶりだね、ナハト。元気にしてたかい?」
「話を聞かされる昨日までは元気でしたよ。……今は、この上なく最悪ですけど」
「はははっ、確かに最悪だろうね。なんせ世界には多くの強者がいるし、預けられる所もすごく厳しいと聞いたしね。
でもそれがナハトの力となる。
いくら才能に恵まれているからって努力を怠ってはいけない。才能は磨いてこそ本領を発揮するものだ。父君も母君もそれを分かっているからこそ、今回のような提案をしたんだ」
「……王者がそう言うのなら、そうなんでしょうね」
「あぁ。レーティングゲームの王者として、嘘はつかないよ」
伯父は微笑みながらそう言うと、俺の頭を撫でた。
とても暖かい手だった。幼い頃からよく魔法とか、レーティングゲームについて教えてもらった。とても思い出深い、大きな手だ。
「……ありがとう伯父さん。なんか自信が出てきたよ」
「ふふっ、礼には及ばないさ。
……私との挨拶もこれぐらいでいいだろう。さぁ、彼女がお待ちだよ」
「かのじょ?」
そう言い、俺はディハウザーさんが向ける顔の方へと視線を移した。
「マリィ。……来てくれたのか」
「うん、ナハトが遠くに行くって聞いたから」
そこには俺と一緒によく遊んだ子、『マルグリット・ヴァレフォール』の姿があった。
人見知りがひどくて最初は顔も合わせてくれなかったが、だんだん遊んでいくうちに仲良くなった無二の親友だ。
こんな夜遅くにお別れを言うため来てくれたなんて、改めてマリーとの友情を確かめられた気がする。
「……いつ帰ってくるの?」
泣きそうな声でそう聞いてきた。
「予定では三年後だよ。もしかしたらもう少し長くなるかもしれないけど」
「そう、なんだ……」
俯きながら彼女は呟き、それから数分の間なにも話さなかった。
今まで経験したことのない、奇妙な時間だった。
「あ、あの、その……わたし、強くなるから」
「!」
それはマリーが必死で絞り出した約束だった。
その後も歯切れが
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