彼女達の結末
一 姉妹
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真紅の広場、死肉と粘菌に塗れた床。私達の築き上げたアンデッドの残骸。彼等の遺体は絨毯めいて視界に広がり、背を向け、扉を潜っても、もう。私たちに襲い掛かる事も無ければ、動くことさえ、呻くことさえ。解体し終えても。彼等の肉と、粘菌を。使って体を直しても、未だ、未練を断ち切る事は出来ず、出来ないけれども。こんな、巫山戯た人形劇を。後日談を。終わらせる為に、歩き、歩いて。
「……リティ」
「分かってる。マトも気を付けて」
物陰、暗がり、影に隠れた。人間のそれとは異なる足音、這う音。時折姿を見せる小型の変異昆虫。しかし、それよりもずっと大きな個体の足音もまた、この地下通路に転がって。
虫は、どうも好きになれそうに無い。環境に適応し、この世界の至る所で生息するそれ等が……あのこともあってだろう。私は、苦手らしい。
今の所、襲っては来ない。しかし、刺激したならば……いや。何か、気紛れにでも。それ等が私達へと向けて、牙を向けないとは限らず。一刻も早く、元凶の元へ、と。焦る気持ちを抑え込み、警戒しつつ奥へと進む。
私達は遂に。目的地。私達を生み出した、ネクロマンサーが潜むであろう、この場所に。二人、二人だけで辿り着いた。
彼女は。私達よりもずっと先に、届かぬ場所へといってしまった彼女は。ネクロマンサーの思惑も、私達を作った意味も。知らないまま……いや。知らないほうが良いのかも知れない。死人を動かし、過去の仲間を嗾けて。きっと、その、目的は。私達の苦しむ姿を見て笑う……そんな、下卑た欲望。悪趣味な遊びに他ならない。
彼女は。幼く、優しい、彼女は。知らないままで良かったのかも知れない、なんて。本当は。あの時救えなかったことを、自分に都合の良いように。理由をでっち上げているだけ。それでも。
もう私は。自分の思いに、足を絡め取られること無く。この後悔も。この自己嫌悪も。心の内に渦を巻かせたまま。受け入れたまま。
歩いて行く。胸の内に積もり積もった思いを溶かすだけの答えは、未だ、見付からず。ネクロマンサー、憎むべき敵を。倒したところで、見付かるかどうかも分からない。分からずとも。
進んでいく。彼女の手、握り返すことの出来ない彼女に代わって、しっかりと。離れぬように握り締め。
「大丈夫」
そんな、私に。彼女は、言う。
「離れないから。何があっても」
彼女には随分と私の弱い部分を見せてしまった。見せてしまっても、尚。嫌うことさえなく。こうして、共に居てくれる。それは、自分の命を守るためだけではない。彼女は、最後まで。私と共に在り続けようとしてくれた。その、姿を。あの笑顔を、思い出して。
「ありがとう……本当に」
感謝しても、しきれない。言葉だけでは伝わらない。だから。
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