彼女達の結末
一 姉妹
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ん、大丈夫よマト。そんなに、大きな損傷じゃないから」
「……ごめん」
私の動揺の所為で。リティは傷を負い……足元に広がる血溜り。皮の焼け溶ける匂い。彼女のよろめき。体のバランスが上手く取れないといった様子で、ふらつく体。傷を、負って。
「……大丈夫よ、マト。それに、あなたの方が怪我してるでしょう?」
「私の傷は、簡単に治るから……でも、リティは」
「私だってアンデッドよ。代えさえあれば、簡単に治るの。ほら」
抱き寄せられる。強い力で。見た目に相応しくない強さで。抱きしめられ、顔は、受けた傷のすぐ近く。彼女の胸に埋まり。
「……心音。しないでしょう?」
傷を受けたから。では。無いのだろう。心臓の位置は避けていた。けれど。
確かに彼女は。私と違って、心臓の鼓動。胸の奥で脈打ち続けているはずの臓器、生の象徴は。彼女の中では、ずっと。ずっと、動いてなんていなかったようで。
「こんな体なんだから。これくらいの傷、有って、無いようなものよ。私も、あなたと同じ、アンデッドなの。そう簡単に壊れたりしない……そんなに、不安そうな顔をしないで」
そう言って。彼女は、小さく笑って。私は、抱きしめられるまま。傷を受けた胸、その胸に顔を埋め。
限りなく無臭に近い粘菌の匂い。アンデッドごとに異なる匂い。彼女の匂いを、間近で感じて。
「……あの子たちは……」
リティの言葉に顔を上げ。背後を見れば、其処では。攻撃を仕掛けるでもなく、倒れ伏したネメシスの体を抱き起こし、抱える、バルキリーの姿が在って。
「……何の、つもりだ」
「損傷は与えた。気は済んだだろう。時間が無い。早急に離脱する」
何処か、遠くで聞こえた大きな音。不服といった様子のネメシスの声と、淡々と告げられるバルキリーの声。対照的にも感じ、何処か似通ったようにも感じる声が、彼女達の元から聞こえて。
「ネクロマンサーは」
「恐らく予想している通り。私達も、攻撃の対象から外されていない」
「……なら、キメラは」
声は。不安に満ちた。恐怖にも似た。
「……こちら側で預かっている。今は、クイーンの元にいる筈だ。安心していい」
その言葉を聞くと。ネメシスの体は、力が抜けたといったように。安堵し、バルキリーの白い腕に、体を預けて。
「……ソロリティ、オートマトン」
遣り取りが終わり。私達へと向き直ったバルキリーが……あの時、地下では。言葉を交わすことさえなかった彼女が口を開く。
「……リティと、マトよ」
「そうか。リティ、マト。傷を与えたことは謝罪する。このまま進めば、ネクロマンサーの元へと辿り着く。……彼女の元へ辿り着いて欲しい」
遠く。音が響く。巨大な何かが地を叩く音。瓦礫を踏む音。崩
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