彼女達の結末
一 姉妹
[5/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
文明の残り香。朧な記憶、蘇ろうと浮かび上がったそれは、けれど。砂漠の中の残骸と同じ。風に吹かれ覆い被さる砂粒に、記憶を覆って沈ませていく靄の中に沈んだままで。
見つめ、見つめ。嘗ての街、何時の間に止んだのか、無数の銃声、傷の再生。足元には幾つもの、潰れた弾丸。私の肉に、粘菌に押し出されて落ちた、小さな鉄屑か転がっていて。そして。
幾らかの距離を置いて。建築物の裏。ゆっくりと姿を覗かせたのは、赤い帽子。それをつかんだ細い腕――現れたそれを、反射的に撃ち抜こうとした彼女の指が引き金に乗せられ、そのまま。発砲する事のないまま、用心金へと掛けられるのを見て。
「……マト」
頷く。それは、他のアンデッドと異なる。明確な意思を持っての行動。恐らく、私たちと話をするため……姿を見せたその途端に、彼女の持った巨大な銃で。撃ち抜かれないようにするための行為で。
その、帽子と腕。覗かせたのも、数秒の間。再び建築物の裏へと姿を隠し。その腕の先……帽子の持ち主。灰色の髪、僅かに褐色のかかった肌……少女の姿。腰に下げた二丁の拳銃。纏った服は傷み、汚れ、それでも。それが、軍服。リティの着たそれと同じものであると、理解出来て。
彼女は。建物の影から進み出ても、口を開くことなく、その。目深に被った帽子の影から瞳を除かせ、睨み合うのみ。飲食店の廃墟から私の横へと歩み出たリティと共に。彼女から目を離す事無く、そのまま。数分の間、そうしていて。
彼女もまた。あの、キメラや、浮遊する少女のように強い自我を持ったアンデッド……サヴァント、なのだろう。造物主によって作られたアンデッド。私やリティと同じように作り出された……そしてきっと、同じように弄ばれている。目の前の彼女も、ただ、置かれた場所が異なっただけで。、私達と全く同じ境遇なのかも知れない、と。
見つめあい、見つめあい。視線を交わし続け。思考を廻らせ続けて。
「……キメラを。キメラをやったのは、お前達か」
彼女が。赤い帽子を被った彼女が、口を開く。その言葉は、躊躇いの中。どんな言葉を投げかけるかを選び、言葉を探し……やっと選んだ、と、いうように。
「…………ごめん」
言葉を。思い浮かべる彼女の姿。私と同じ顔をした彼女が、激昂する姿。もがき苦しむ姿。泣き叫ぶ姿を、思い浮かべて。そんな。言葉を返して。
そんな私に。ふ、と。小さな笑みを。笑みを浮かべて。
「謝らないでよ。……襲撃したのは、キメラのほうなんだ。だからと言って、敵対していることには変わらないんだが」
一瞬。少女らしい表情を浮かべ。言葉もまた、柔らかなそれから、硬い言葉。出会った時のリティにも似た……表情、口調へと戻って。
「……私達を通しては、くれないのね」
「
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ