彼女達の結末
一 姉妹
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の言葉を聞くまで、此処が飲食店であっただろうということに気付きさえせず。言葉へと頷き……頷きながらも。目に映る景色を、蘇った記憶と照らし合わせ。自分の過去を思い出しつつある彼女と、自分の今、この現状を比べてしまって。無言のままに建物の奥、通路の奥。雑多な破片、瓦礫、靴の散らばる閉じた扉――拉げはしているものの、まだ、亀裂が入り傷んだ壁に張り付いたまま。明かりの漏れ出る扉を見つけて。
彼女に視線を送る。重なった視線、頷き。肩に掛けた対戦車ライフルを構える彼女を横目に、扉へと向かい直り。
力を込めた獣足。金属の扉を、その先、微かに響いた音の主へと向けて。
全力で蹴り飛ばす。打ち飛ばされた扉は、鈍い音を立てて何かにぶつかり。ぶつかるも、勢いは殺されることも無くそのまま、扉の端、僅かに覗いた長い銃身……備えたそれごと吹き飛んで。
「援護お願い!」
「了解、気をつけて!」
言葉は短く。外に飛び出すや否や、撃ち抜かれる足元、銃声。聞こえた先に目を向ければ、割れた硝子の向こう、一瞬、鈍く輝いた……銃を持ち、身を屈めようと、隠れようとするその影を。
背後、聞きなれた発砲音。その音と殆ど同時に撃ち砕かれる、廃墟に隠れた狙撃手の姿。リティの構えたライフル、放った銃弾は狂い無く敵を撃ち貫いて。銃弾を撃ち出したその直後、身を潜めた彼女の真横、コンクリートの壁に銃弾が埋まる音を聞きながらも、裏通り――表側のそれよりも狭いその通りの中央へと躍り出て。
今なら。リティが傷付く心配は無い。私一人なら。この程度の損傷、と。
撃ち抜かれる。異なる方向から放たれた数発の銃弾は私へと埋まり、埋まり、衝撃に揺れ。けれど。肉は、粘菌は、体の奥へと入り込まんとする潰れたそれの行く手を阻み押し出して。吐き出した弾丸、零れた粘菌、再生する体。強靭なアンデッドの肉体、小さな傷はその場で塞がり。痛みを感じることも無ければ、幾ら銃弾を食らったところで大した問題ではなくて。
私に向けて狙いを定めた狙撃手達が撃ち抜かれていく。突き出した銃口を目印に、響いた発砲音を手がかりに。彼女が引き金を引く度に、弾けるように噴出した赤、窓枠の向こうから落ちる影。一体、また一体と壊されていく敵の手駒。それ等へと目を向けながらも、彼ら。スナイパー達を率いる者が現れるのを待ち、構える。
「……このまま睨み合っていても、そっちの戦力が削れていくだけだと思うけれど」
何処にいるのかも知れない。敵へと声を投げ掛ける。左右に並ぶ建築物、下がる看板、窓硝子。破れて転がったパラソルと、倒れたテーブル、圧し折れたベンチ……いつか見た、ような。けれど、はっきりと思い出すことの出来ない景色。あの扉から外を窺う彼女なら、何か、この景色を見て蘇る記憶もあるのだろうか、と。
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