彼女達の結末
一 姉妹
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「……こっち、こそ」
私も。行動で示していこう。私と離れないで居てくれる、彼女から。離れることなく。引き離そうとする手に抗い続けよう、と。
本の少し。顔を赤らめ、視線を外す。彼女の歩みと歩みを合わせて。
奥へ。奥へと。取り戻しつつある記憶、その過去の中でいつか歩いた。ぼんやりとではあるけれど、この通路には、覚えがある。恐らく、あの広場も。電車の終点、駅を潰して作ったもので。その、駅も。私が生きていた頃には既に廃線。電車は撤去され、隔壁で塞いでいたはずで。
私の記憶が正しければ、この通路の先には一般市民の暮らす地下都市に続いていたはず。そして、その先には。
軍基地。私が、彼等と共に所属していた、軍事施設があるはずで。ネクロマンサーが居るとするならば。きっと、其処に居るのだろう。
「この先に、街があるはず。マトも覚えがあるかも知れないわね」
徐々に浮かび上がる記憶。その、記憶を伝えても。
「……私は、何も思い出せない」
彼女は。浮かない顔で。
「……その内、色々と思い出せるよ。多分、マトも……私達は皆。生きていた頃は、此処に居たんだと思う」
何の関係も無い者を、こうして弄ぶことは無いだろう、と。恐らく、此処で生まれ、此処で死に。何らかの理由があって蘇らせ、何らかの理由があって悪意を向けているのだろうと。
ならば。生前の私達は。一体どのような生き方をしたのか。どのような死に方をしたのか。と。
思いを馳せながら。私達は。
通路の終わり。開きっぱなしの扉の先。
記憶の中に浮かぶ街へと。歩みを、進めた。
日の光に見立てた照明が、導入されたのは何時のことだったか。人工太陽、日光と。街が浮かれたあの日のことを思い出す。
空の色に見立てた天井が、導入されたのは何時のことだったか。朝が来れば青く明るく。夜になれば暗く、星空を映した天井を。一日中眺めた日が、確かに、有った。
無数の建物。地下に築き上げた都市。地下であることを忘れるほどに巨大な。地下であることを忘れるほどに、綺麗な空の広がる街。
街、だったのに。
「……予想はしていたけれど、酷いね」
未だ稼動し夕暮れを映す天井は所々剥げ落ち。何かの襲撃を受けたらしい街は、破壊し尽くされ。崩れ落ちたビルの残骸は道路に散らばり。地上にあったあの街と同様か、それ以上に傷付いた。外のそれとは異なる赤に彩られた空は、酷く不気味に建物の影を浮かばせた。
安全なはずの地下シェルター。なのに、何故。滅んでしまったのか。此処に住んでいた人々は――
自分の、手を見る。生気を失った、白い手を。此処に住んでいた人々は、きっと。
「……生き残り、なんて。居ないでしょうね」
私は。軍に所
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