第四食
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私の質問によって一瞬強張る。しかし束の間強張りを隠すような笑みに転変した。
「お散歩よ? 今日はお天気が良いから」
「……そう、ほどほどにしないとせっかくの肌が焼けるわよ」
「ちゃんと日焼け止め塗ってるから大丈夫! ……ってあれ? 今もしかして──」
面倒な絡みが始まる前に早足で縁側に戻る。壁の向こうでキャーキャー騒いでいるのは無視するに限る。
最近ちょっとした弾みで誉めの言葉が零れるようになってしまった。それも本音だから余計に恥ずかしい。誰かを誉めるなんて慣れないことをすると違和感しか感じないはずなのに、どうしてだろうと首を捻ってみると原因に思い当たった。
兄のせいだわ。きっと。
ちょっとしたことに本気で感心して誉めてくるせいでうつってしまったに違いない。何でそんな部分だけ似るのか、というのは言及するまでもない。
汚れた靴下を脱いで縁側の端に置いて、改めて戸を叩く。中からいつもの返事が返ってくる。少し不安な気持ちになりながら戸を引くと、その先にはいつもの優しい笑みがあった。
そのことに安心して私もいつものように兄に声を掛ける。
あんな表情をした後にいつものように振舞えるはずが無いのに、私はそれに気づけなかった。
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