26.迷子のアニエス
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翌日、冒険者になることを伝えた時にエイナからも似たようなことを言われた。
せっかく生き残った命を簡単に危険に晒すのは止めなさい、と。
「それでも……この冒険は僕の希望なんだ。これに縋るしかないだろ……?」
皆には分からないだろう。
いや、分からないほうがいい。
何もせずにいるのが、最もティズの心を蝕むのだということを。
目を閉じても耳を塞いでも、夜になると何度もリフレインされる光景。
大穴に落ちていく弟の手を握りしめた感触。その手を放した瞬間の、悲鳴。
何度も何度も魘され、月明かりの中で目を覚まし、やがてティズは寝る事を諦めた。
どんなに穏やかな日々を送っても、どんなに養生しても、この悪夢が終わることはない。
だから、夢でなく現実で終わらせるんだ。悲劇を食い止めるしかないんだ。
そのために、せめて世界を救う君の盾になるくらいなら出来る筈だ。
ずっと取り留めもなくそんなことを考えていたティズは、ふと異常に気付く。
「そういえば、アニエス遅いなぁ………これからエイナさんと一緒に入るファミリア候補の相談をする予定だったのに」
今日の朝、ティズはノルエンデ復興計画の細かい部分を決定するために朝からギルドにいた。
そしてギルドに行く前に、確かに宿でアニエスに待ち合わせ場所を伝えた筈だ。
おまけに彼女は昨日まる1日アイズに連れられて町を案内され、理由は分からないが何故かものすごく念入りに道を説明されたそうだ。そして地図を渡した上でエアリーも彼女についている。だからまさか迷子ということはない筈だが――と、ティズの脳裏に嫌な想像が過る。
「まさか、もうトラブルに巻き込まれたのか!?」
あり得ない話ではない。ここは神住まう町オラリオだ。巫女を快く思わない存在やエアリーに勘付いた存在がいないとも限らない。だとしたら、このまま待っている訳にはいかない。いてもたってもいられなくなったティズは立ち上がってギルドの外に向かおうとして――
「いやぁ、まさか案内中にも迷子になろうとするとは予想外だったぞアニエスよ……」
「世の中にはいるんですね、神様にイジワルされて生まれた人が……」
「うううううう……わ、私だって好きで迷ったわけじゃないです!!」
迷子の迷子のアニエスがさらっとギルドに入場し、ティズは腰が砕けてそのままズコー!とずっこけた。
= =
「アニエス。悪いけど、明日からは一人で行動せずに必ず僕と一緒にいてくれないか?」
「え……は、はい」
真剣な表情で告げるティズに、恥ずかしさで顔を赤くしたアニエスが素直に頷く。
聞きようによっては告白紛いの内容なのに迷いなく真顔で言ってしまうのがティズという男。相手がアニ
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