虎と龍の思惑に
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存在を証明出来ない。
だから私は、この命を賭けて皆に全てを伝えよう。
それでいい。それでいい。
此処が、此処こそが……私が命を賭けるに相応しい場所。
だから早く来い、飛将軍。
遠く、赤い髪が燃えていた。
薄緑色の軍師を連れて、最強の武が遠くに見えた。
変わりないあの姿に、虎牢関と洛陽での戦いが思い出されて身体が震えた。
間の辺りにしたからこそ分かる力の差がある。あいつは間違いなく人の頂点に位置している。武のみで天に昇れる者がいるとしたらきっとあいつだけだろう。
本物の天才、と言ってもいい。私達や夏候惇みたいな才に秀でたモノではなくて、本当に天から与えられたモノを持っているに違いない。
しかしなんだ……この違和感は。
遠くに見える飛将軍が小さく見えた。
前のように圧倒的なまでの力の差を感じない。
なんでだろう。なんで、なんで……考えるのは面倒くさいからやめようか。
私はただ、あいつを打ち倒す剣になる。
ギシリ、と拳が強く握られた。知らぬうちに口元が笑みを刻んでいた。
強者なのだろう? 暴力で王を殺せるのだろう? 外策で国を崩せるのだろう?
私の全てと、孫呉の全てをこの剣に乗せてやる。
お前達二人に、教えてあげる。
国を守るモノの剣を。
†
早馬が来たのは必然。広い対応をさせていた情報収集の賜物であろう。
二里ほど離れた開けた場所で戦が行われていると言う。其処から軍師の出した予想は一つのみ。
誰が戦っているか……そんなこと聞かずとも分かった。帰ってきた姉さまと冥琳が戦っているのだ。
全速力で行軍すること幾分、土煙の上がる戦場に漸く到着して私達は目を疑った。
幾重モノ死体の山、未だ止むことの無い剣戟。姉さまが連れていたのは一万程度のはずで、敵の数は五万を超えていた。
しかし未だにことを運んでいる様は称賛するしかしようが無い。
此処まで違う。姉さまと私達は。
カチャリ、と音が鳴る。
横を見れば諸葛亮が不思議な筒を目に当てていた。
「……未だ部隊同士の戦で膠着しているようですね。飛将軍はまだ出てません。孫策さんは少し傷が多いです」
まだ遠くて見えないはずなのにそんなことを言う。丘の上からだから確かに戦況は分かるが、呂布は旗さえ掲げていないというのに。姉さまが傷だらけなんてことも見えないだろうに。
その道具が答えなのだろう。遠くが見えるモノなのだ、きっと。徐公明はモノづくりも出来ると言っていたし、きっとその名残に違いない。
「完成してたのか、それ」
「まだ試作段階ですが……望遠鏡の効果はまずまずです」
白蓮の問いかけに答えながら諸葛亮はぶるりと震えた。一寸宿し
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