虎と龍の思惑に
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乱世の不可測。悪龍の残した最後の果実で、私が受け持つ罪の象徴。
故に私は嘘つきでいい。
乱世の不可測の隠し場所など、私が知っているだけでいい。
ただ、隠れる前に一つだけ仕事をして貰おう。
陳宮さんの望みが叶う可能性の一つに賭けてみよう。同時に、私の中のケモノにとっての餌の可能性にも賭けてみよう。
強すぎる想いを宿すモノと戦えば、もしかしたら呂布さんは戻るかもしれない。嘗て、優しい真月に照らされて人形から脱却した時のように。
しかしもし人形のままであっても……孫策さんを無力に出来る。あわよくば……
†
当然の帰結と言うべきか、劉表軍はねねの指示を待たずに村や街を食い散らかした後に合流を始めた。
人とは欲の深い生き物だ。楔が外れてケモノに堕ちればもっと大きな餌を探してそれを手に入れる手段を講じ始める。
正当性が自分達にあると思い込み、それでいて目の前で幾多も勝利――と呼ぶには些か下劣に過ぎるが――を重ね続けていれば自然と自分達が強いとでも思いこむ。
孫呉側はただ時機が悪かっただけだ。分散されたからこそ手間と人員を取られて対応が遅れていただけだ。本来なら負けるはずも無い相手なのだ。
だから……纏まって、粗雑ではあるが軍としての行動を始めたその集団を冷めた目で見つめつつ、ねねは大きなため息を吐いた。
「しかと見ておくのですよ副隊長。脳髄に欲望の汚泥が詰まっている連中の末路を。そして追い詰めた虎がどれほど凶暴かを。
卑しいネズミの群れでは虎には勝てない。あいつらと違い、ねね達は群れでは無く“個”となるのです。虎の牙と爪を叩き折ってひれ伏させるには、今はまだ我慢なのです」
コクリと頷く男が後ろで一人。丁度、雄叫びが上がった。
丘の頂で平地にて行われる戦場で土煙が舞いあがる。
現在入ってきている情報は多い。それもそのはず、各地で収束に向かい始め、今こそ機なりと挙って本城に向かい始めた劉表軍の隊を、虎の軍勢が各個撃破し始めたのだから。
南では黄蓋の舞台にハリネズミにされたという。東では甘寧の水軍によって河に沈められたという。そして西南では……白馬義従と孫呉の姫に踏み潰されているという。
正直な所、劉備勢力の動きはねねの計算違いだった。
まさかこんなに早く対応してくるとは露とも知らず、それも孫呉等に力を裂く暇など無いはずだ、と。
それでいて彼の者はねねにとって嫌な手を打って来ても居た。
――まさか諸葛亮の奴が……荊州の攻略を同時進行で進めるなんて思わなかったねねの失態。
ギリ、と歯を噛みしめた。
短い会合で交換した情報は幾多。しかもその全てが悪龍の残した策略を上手く使えるよう
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