閑話―猪々子― 下
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交渉を持ちかけた。
『君達、その鍋一杯の料理、私達に売ってくれないか?』
『おお! ほら見ろ二人とも、この料理、わかる人にはわかんるんだ』
『な、鍋一杯は止めといた方が良いと思うの……』
『せやせや、兄さんもまだ死にたくはないやろ?』
『……? 何のことか良くわからないが大量に必要でな、鍋ごと頼む』
こうして六品目が用意された。しかし運び込んで蓋を開けてみると―――
猪々子のような被害者が続出、激辛の類だとわかった。しかしここまで来て別の物を探すわけにもいかず。『ソレ』が六品目となったわけだ。
かくして、辛さに耐性がある袁紹が優勝をもぎとったのだ。
「あ〜、今日はひどい目にあったぜ」
祭りが終わり、自室で意識を覚醒させた猪々子は、通路を歩きながらながら呟く、楽しく無かったのかと聞かれれば――楽しかったのだが、如何せん最後の『アレ』を思い出すと汗が滲み出る。もはやトラウマに近かった。
そんな猪々子は優勝を果たした袁紹に祝いの言葉と、激辛料理をたべてなぜ平気だったのかなど、色んなことを話したくて彼の部屋に向かっていた。日は既に沈み、異性の部屋に訪ねるような時間ではなかったが、良くも悪くも天真爛漫な彼女には関係なかった。
「……ん?」
部屋の前に差し掛かると、中から袁紹以外の人の気配がした。もしや賊が? とも思ったが、話し声を聞く限り違うようだ。
「やべ!!」
中の気配が扉に近づいてきたことで思わず身を隠す。そして扉が開かれ――半裸の星が姿を現した。
「っ!?」
それを見た猪々子は息を飲み込む。星は袁紹のからかいに失敗して追い出されただけだが、他者からみれば逢引のそれである。邪推しても仕方が無い。
「やれやれ、一筋縄では――そこにいるのは誰か!」
「あ、アタイだよ星」
「なんだ猪々子ではないか、こんな夜分遅くに何をしているのだ?」
「何をって……それはアタイの台詞だろ、星はこんな夜中に麗覇様の部屋で何をしていたんだよ、それも、そんな格好で」
「ん? ……ほほぅ」
若干頬を赤らめながら問い返す猪々子を見て、星は口角を上げる。その笑みには悪戯心がにじみ出ていた。
本来の目標である袁紹にはあしらわれてしまった。他の者をからかって楽しもう。
猪々子は不幸なことに、その標的にされたのだ。
「何って、夜分に男女が一つの部屋にいたのだ……ナニに決まっているだろう?」
「そ、そうなのか」
星の含んだ言い方に、ますます顔を赤らめる猪々子、その様子に畳み掛けるように言葉をだそうとしたが――
「アタイもう寝る……じゃあな星」
「む、主殿に用があったのでは無いか?」
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