閑話―猪々子― 下
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に期待していたが駄目のようだ。
その後、彼女等は料亭で接客業に励み(関羽は厨房から追い出された) 路銀を工面した後幽州へと出発した。
「さぁ残るはあと二人! 文醜様と袁紹様の一騎打ちだーー!!」
かなりの時が経っていたが歓声に衰えは感じられない。その中で、選手として残った二人は目を合わせ笑みを浮かべる。
「どうだ猪々子、そろそろ限界が見えてきたのではないか?」
「まさか! それにアタイには秘策があるんだぜ!!」
「……ほう?」
何てことは無い。その秘策とはただの絶食である。正し前日の夜から――
大食いな猪々子にとって一食でも食事を抜くのは死活問題だ。それを大会開始の昼まで、前日の夜と当日の朝の二食分を抜いてきたのだ。会場に向かう途中漂ってくる出店の料理の匂いと、悲鳴のような音を鳴らす空腹に耐えて――
その甲斐あって未だ余裕がある。腹六分目といったところか……、猪々子は勝ちに来ていた。
「それでは六品目! 特盛麻婆豆腐です!!」
「おお! 麻婆豆腐はアタイの好き……な……」
眼前まで運ばれてきた好物であろう物体を見て固まる。真紅を通り越して赤黒い見た目。
気泡がボコボコと発生しているが、それは熱のせいなのか、それとも別の物か、猪々子が思い描いた好物とは余りにもかけ離れた『ソレ』に、頬をヒクヒクと痙攣させた。
「で、でもまぁ、味は普通かもしれな――うぎゃあああああ!?」
「猪々子!?」
現実逃避に近い希望を抱き、『ソレ』の匂いを嗅ごうとした猪々子は悲鳴をあげ、両目を押さえた。
「目が、目がぁぁぁあ!」
激痛。『ソレ』に顔を近づけることで湯気が目に入ったのだ。見かねた袁紹が湿らせた手拭を用意し。彼女の目にあてがう。それで猪々子が落ち着きを取り戻した所で、司会者は続けた。
「ご察しの方もいると思いますが、六品目は激辛料理です!!」
「わからいでかぁぁあ!!」
目を赤く充血させた猪々子が叫ぶ、『アレ』が激辛であることを身をもって知ったのだろう。
見開いたことで再び痛みが走り、再度手拭を目頭に押し当てた。
「それでは〜食事再開!!」
ゴォォォン、と開始を知らせる銅鑼が鳴る。袁紹の要望により、猪々子が落ち着くまで開始時間を遅らせたのだが、幾分か熱が冷め、湯気の量が控えめになった『ソレ』は、未だにボコボコと気泡が発生している。
「……」
猪々子はゴクリと喉を鳴らす。正しそれは、今までのように絶品の料理を前にした時のものではない。目の前の『ソレ』に対する戦慄、否、歓喜、否、そうこれは――まごうことなき恐怖だ。
「ええい。ひびっていても始まらねぇぜ!」
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