閑話―猪々子― 下
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まで堪能してたのか、アタイは我慢したっていうのに……」
「何故悔しそうなのだ」
「桃香様、嫌な予感がするのですが……」
「だ、大丈夫だよ愛紗ちゃん! 私達には手店で食べる持ち合わせ無かったし!!」
「それはそれで悲しいです」
劉備達一行は大会の会場に向かう前に幾つもの出店を見てきた。恋と同じく、食に遠慮のない自分達の妹を思って関羽は不安を口にしたが、主の情けなくも説得力ある言葉に頷く。
張飛は劉備以上に唯我独尊な所があるが、最低限の常識は弁えている。
少なくとも無銭飲食をするような娘ではない。料亭の一件があるが、あれは劉備の手持ちに余裕があると見た上での暴走だ。
関羽は自身にそう言って聞かせる。しかし胸騒ぎが収まらない。何かを見落としているような――
「ん? あーっと! 呂布選手に続きトントンちゃんまで脱落だーー!!」
「いつの間に」
「うむ、恋に釣られたのか、仲良く寝息を立てているな」
そしてその不安は現実のものとなった。会場から聞こえる司会者の声に反応して視線を送ると、そこには呂布と一緒になって多くの犬達に寄り添い。気持ちよさそうに寝息を立てている義妹の姿があった。
「え、な、なんで!?」
「……恐らく」
実は大会前に張飛は広場に遊びに行っていた。祭りというだけあって出店のみならず。様々な催しがあったためそれを見に行っていたのだ。
本来であれば義姉の二人もそれについてくはずであったが、万が一に備え張飛に我慢するように言い聞かせていた結果、彼女は二人の目を盗んで遊びに出かけたのだ。
そして大会前に戻ってきた。勝手に離れたことを咎めようとした二人だったが、広場の見せ物が凄かったと、目を光らせながら語る義妹の姿に毒気を抜かれ、寧ろ大会前に戻ってきたことを褒めていた。
「でも、鈴々ちゃんに手持ちは――」
「桃香様、想像してみて下さい」
瞳に涙を浮かべ、可愛らしく腹を鳴らしながら出店を凝視する童子。それを見た大人たちは――
余談だが、ここ南皮は袁紹の影響を強く受けている。彼の豪快さや寛容さは尊敬を集め、いつしか住民達にもその性質が移っていた。金に余裕の無い者や足りない者達、そんな相手でも邪険にすることなく接客し。無料で食べ物を提供するほどだ。
そんな彼等が目の前で空腹を訴える子供を放って置けるだろうか、答えは否。
可愛らしい少女に我こそがと食べ物を提供しだし。それに味をしめた張飛は出店を周り、同じ手法で食べ物にありついていたのだ。量こそは恋に劣っていたものの、無償で出店を制覇していた。
「――と、思われます」
「そんなぁ……」
関羽の説明で肩を落とす劉備、優勝賞金
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