閑話―猪々子― 下
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常人であれば見ただけで満腹感を感じさせるほどの料理を難なく平らげ、その上で食い足りないと称して街に繰り出すのだ。
そしてその過程で広大な南皮にある食事処を制覇していた。間違いなく優勝候補である。
「続いて二人目、『武も胃袋も次元が違う』呂奉先様ーー!!」
「……」
『うおおおおおおおおおおおおッッッッ!!』
「あ、またアタイの時より声援が大きいじゃないか!!」
静かに歩み出る恋、その姿に観客、参加者問わず沸きあがる。呂奉先の名は武芸大会の頃から話題沸騰だった。そんな彼女も猪々子のように街に繰り出しては食べ歩きをしている。
武芸大会での熾烈な活躍もあり、初めは敬遠される存在だったが今は民衆に愛されている。
その大きな理由は恋の食事風景だ。黙々と口を動かし食事するその姿は、リスのような愛らしい小動物を連想させ見る者全てを癒してしまう。今では彼女の食事見たさに無料で料理を提供する場所があるほどだ。
そしてそんな彼女も例に漏れず大食いである。街に繰り出す理由は猪々子と同じく、南皮の食事処おろか屋台に至るまで制覇済みなのだ。そのため最優勝候補と噂されており、賭け金は彼女に集中していた。(次点で猪々子)
「そして三人目、『今大会最年少』トントンちゃーん!!」
「沢山食べるのだ〜!」
『おおおおお!』
三番目に現れた娘は猪々子達に比べとても体が小さい。体格は音々音より少し大きいくらいで何故か……豚の被り物をしていた。
先に紹介された猪々子、恋とは違いこの娘の素性は不明である。参加者達の中で最も幼いであろう彼女は、司会者のノリで注目選手の一人にされてしまった。
別に悪気があった訳ではない。他所から来たであろう童子に良い思いでを作ってあげようという多少の善意と、見た目幼く奇怪な被り物をした選手の登場に、観客がどのように反応するか見たかっただけだ。
そんな司会者は彼女の食べっぷりに驚愕することになるが――
「鈴々ちゃーん! がんばれーー!!」
「桃香様、今は」
「あ、そうだった! トントンちゃーん! がんばれーー!!」
観客達の中に見覚えのある顔ぶれが紛れている。劉備と関羽だ。
袁紹と謁見した彼女達は、彼の要請により幽州へと出立していたが途中で引き返して来ていた。
「それにして桃香様、以後は今回のようなことが無いように頼みますよ?」
「あ、あはは……ごめんなさい」
幽州へと向かっていた劉備達一行は途中で路銀が尽きてしまった。そもそも、以前料亭での支払いが出来なくなったと言う経緯がある彼女達が、多くの手持ちを持ち合わせていないことは当然である。
そしてそれに気がついたのはあろう事か、南皮を出発して一週間
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