閑話―猪々子― 下
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、何時からか麗覇様に魅かれてたんだ」
先ほど袁紹が見せた異性の態度、それは猪々子の女を刺激し。彼女の心を溶かした。
猪々子は心のどこかで女であることを否定していたのだ。想い人は同姓。自身は男被れ、だがそんな自分を袁紹はどこまでも女として扱い。包んでくれた。
「もう一度言うぞ、我は猪々子が好きだ。臣下としてだけではない。一人の女性として」
「うっ」
余りにも真っ直ぐな言葉に思わずたじろぐ、自身の想いに気がつき、覚悟をしたとはいえ、この恥ずかしさには当分慣れそうに無い。だが、袁紹にここまで言わせて無言でいるわけにもいかない。猪々子は意を決し。口を開いた。
「アタイも、麗覇様が好きだ。あ、愛していると……思う」
「……」
顔を赤らめながら答える猪々子、その表情は間違いなく女のそれだ。
袁紹は鏡を持ってきて、彼女にその表情をみせつけてやりたいという衝動にかられたが、そのような行為は無粋である。部屋の明かりを消し。暗闇の中であっても、赤面をしているであろう猪々子の顎に手を掛け、顔を近づけた――
大きな寝台の上で、袁紹と猪々子は互いに全裸で横たわっていた。
室内はまだ早朝、朝日が昇りきらない故に薄暗く、互いの呼吸もあわさって淫靡な雰囲気を醸し出していた。
情事後の猪々子は袁紹にぎゅっとしがみつき、愛しい主を体全体で感じていた。
そんな彼女に彼は腕枕をしてやり、少し汗で湿った髪を優しく撫でる。
「なんだろう。すごい恥ずかしい」
「今更であろう」
「そ、そうなんだけどさ……う〜、麗覇様の馬鹿」
「……」
初夜を通した女性はここまで変わるものなのだろうか、その可愛らしい言動に、再び欲情させられながらも自制する。初めての相手にそこまで求めるのは酷だろう。
「麗覇様……アタイさ、女に生まれてきて良かったよ」
「……そうか」
へへっと眩しい笑顔の猪々子に袁紹も表情を崩す。二人はそのまま、心地よい疲労と共に寝息を立て始める。
起きたら待っているであろう。昨日よりも輝かしいこれからに思いを馳せながら――
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