閑話―猪々子― 下
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ばかりに斗詩は猪々子を捲くし立てた。
始めは何やら羞恥心から渋っていた彼女も、観念したのか承知した。
「き、緊張するな」
袁紹の部屋の前で、柄にも無い台詞を呟く猪々子、斗詩の話しでは、彼女は先に袁紹労っておくとのこと、事情は説明しておくから、途中から部屋を訪ねるように言われていた。
「たのもー! 斗詩一人に麗覇様の相手なんて無茶させられ……ない…………ぜ?」
不安をかき消すように勢い良く扉を開け硬直する。部屋の中には袁紹一人で、先に来ているはずの親友の姿が無い。
「良く来たな猪々子、話しは聞いている」
「え、ああ――へ?」
予想外の展開に目を白黒させる猪々子、袁紹はお構いなしに彼女を部屋の中に引き入れる。
「斗詩……そうだ斗詩は!?」
「斗詩は来ない。今宵は我と二人きりだ」
「え、そ、そんな!」
いつに無く積極的な袁紹に落胆とも、歓喜とも取れる声を上げる。
自分の目的は袁紹に便乗して斗詩を愛することだ。だが斗詩がいない今、何故か落胆よりも恥ずかしさが勝り、袁紹の顔をまともにみれない。
格好も精一杯誘惑しようと、いつぞやの星のような出で立ちであったため、さらに恥ずかしさに拍車が掛かる。
「ふむ、普段も可愛らしいが、今日の猪々子は美しいな」
「な、何言ってんだよ麗覇様〜、冗談は御輿だけにしてくれよ」
「猪々子、今の言葉が嘘かどうか、わからぬお主ではあるまい?」
「〜〜っ」
その通りだ。長年付き添ってきた期間は伊達ではない。袁紹が嘘を苦手としていること、相手の目を見ながら発する言葉に嘘が無いことは知っていた。
だが、それを認めると言う事は袁紹は自分に女としての魅力を――
「我は当の昔から、猪々子を一人の女として好いていたぞ」
「うえ!?」
そこへ畳み掛けるように言葉を続ける袁紹。すでに猪々子は混乱中だ。それを知ってか知らずか、袁紹は彼女に問いかける。
「猪々子は――我をどう思う?」
「あ、アタイ……アタイは――」
そこまで声に出した猪々子は、徐々に近づいてくる袁紹の端正な表情に臨界点を迎え
「……キュー」
「猪々子!?」
気を失った。
「アタイは、麗覇様を実のアニキのように思っていたんだ……」
しばらくして意識が戻り、落ち着いた猪々子はポツポツと心情を語り始める。
袁紹と関係を持とうとしたのは斗詩が目的だったこと、学に自信の無い自分を、力強く、そして寛容に引っ張ってくれる袁紹に、母親から感じるような家族愛に似た安心感を得ていたこと、それを理由に袁紹を兄のように思っていたことを話した。
「でもさっきわかったよ、アタイは女として
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