閑話―猪々子― 下
[11/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
などと言い出せなかった。
結局、彼女に真意を聞けたのは大分後、袁紹が張角の救出及び、黄巾の吸収のために広宗向かった後だ。南皮の守りを命じられた猪々子達、他の者がいないのを良い事に斗詩に聞きたい事を話した。
「なぁ斗詩、麗覇様とは……」
だが、いざ言葉にだそうとすると口ごもってしまう。そんな猪々子の様子に、斗詩は彼女が聞きたい事を察し。顔を赤らめながら答えた。
「うん、私、麗覇様と結ばれたよ」
「そ、そっか、おめでとな斗詩!」
「ありがとう」
まただ。何かを失ったような喪失感を感じる。思い人が男と結ばれたから? 違う。
それならこの感情は嫉妬のはずだ。
「なぁ斗詩、アタイも麗覇様と……その、結ばれたいって言ったらどうする?」
「……」
猪々子らしからぬ消極的な言葉に絶句する斗詩。だがすぐに表情を戻し。彼女に聞き返した。
「文ちゃんは、麗覇様のこと――好き?」
「……良くわかんねぇ」
これは猪々子の素直な気持ちだった。幼い頃から一緒に過ごしてきた主、袁紹。
なまじ共に在った期間が長かったせいか、それとも彼の包容力がそうさせるのか、猪々子にとって袁紹は出来の良い兄のような存在だった。
故に、彼を異性として好きか――と聞かれると首をかしげてしまう。
だがもし。もしもだが袁紹から猪々子を欲した場合。きっと自分は拒まないだろう。異性として自分を御せるのは彼ぐらいのものだろうし。それを受け入れられる程度には性的な魅力を感じている。
では何故、そこまで曖昧な胸中で袁紹と関係を持とうとするのだろうか、斗詩には理解できた。彼女は仲間はずれが嫌なのだ。だから先ほど、自分が袁紹と結ばれたという事実を聞き、表情を暗くしたのだ。
別にこのくらいのことで三人の輪が崩れるとは思えないが、斗詩がそう思うのと、猪々子が感じていることは違うのだろう。
「わかったよ文ちゃん」
「おお! さっすが斗詩、頼むぜ!!」
そこで斗詩は一計を講じることにした。彼女が仲間外れを嫌うのは兎も角、袁紹に対する想いに無自覚なのは大問題だ。そもそも、家族同然に好いているからと言って、抱かれても良いなどという結論に到達するはずもない。この鈍感な親友は、心の奥に袁紹に対する異性としての好意を隠しているはずだ。
猪々子の要望は斗詩と共に袁紹と一夜を過ごすこと、初めてで勝手がわからない故の提案だろう。
そこで斗詩はこの件を掻い摘んで袁紹に説明。彼の采配に期待する事にした。
この敬愛して止まない主なら、大事な親友の心を救ってくれるだろう。そう信じて――
そしてその日は訪れた。決行日は広宗から袁紹達が帰って来たその日、善は急げと言わん
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ