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恋姫†袁紹♂伝
閑話―猪々子― 下
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などと言い出せなかった。

 

 結局、彼女に真意を聞けたのは大分後、袁紹が張角の救出及び、黄巾の吸収のために広宗向かった後だ。南皮の守りを命じられた猪々子達、他の者がいないのを良い事に斗詩に聞きたい事を話した。

「なぁ斗詩、麗覇様とは……」

 だが、いざ言葉にだそうとすると口ごもってしまう。そんな猪々子の様子に、斗詩は彼女が聞きたい事を察し。顔を赤らめながら答えた。

「うん、私、麗覇様と結ばれたよ」

「そ、そっか、おめでとな斗詩!」

「ありがとう」

 まただ。何かを失ったような喪失感を感じる。思い人が男と結ばれたから? 違う。
 それならこの感情は嫉妬のはずだ。

「なぁ斗詩、アタイも麗覇様と……その、結ばれたいって言ったらどうする?」

「……」

 猪々子らしからぬ消極的な言葉に絶句する斗詩。だがすぐに表情を戻し。彼女に聞き返した。

「文ちゃんは、麗覇様のこと――好き?」

「……良くわかんねぇ」
 
 これは猪々子の素直な気持ちだった。幼い頃から一緒に過ごしてきた主、袁紹。
 なまじ共に在った期間が長かったせいか、それとも彼の包容力がそうさせるのか、猪々子にとって袁紹は出来の良い兄のような存在だった。
 
 故に、彼を異性として好きか――と聞かれると首をかしげてしまう。
 だがもし。もしもだが袁紹から猪々子を欲した場合。きっと自分は拒まないだろう。異性として自分を御せるのは彼ぐらいのものだろうし。それを受け入れられる程度には性的な魅力を感じている。

 では何故、そこまで曖昧な胸中で袁紹と関係を持とうとするのだろうか、斗詩には理解できた。彼女は仲間はずれが嫌なのだ。だから先ほど、自分が袁紹と結ばれたという事実を聞き、表情を暗くしたのだ。
 別にこのくらいのことで三人の輪が崩れるとは思えないが、斗詩がそう思うのと、猪々子が感じていることは違うのだろう。

「わかったよ文ちゃん」

「おお! さっすが斗詩、頼むぜ!!」

 そこで斗詩は一計を講じることにした。彼女が仲間外れを嫌うのは兎も角、袁紹に対する想いに無自覚なのは大問題だ。そもそも、家族同然に好いているからと言って、抱かれても良いなどという結論に到達するはずもない。この鈍感な親友は、心の奥に袁紹に対する異性としての好意を隠しているはずだ。

 猪々子の要望は斗詩と共に袁紹と一夜を過ごすこと、初めてで勝手がわからない故の提案だろう。
 そこで斗詩はこの件を掻い摘んで袁紹に説明。彼の采配に期待する事にした。
 この敬愛して止まない主なら、大事な親友の心を救ってくれるだろう。そう信じて――






 そしてその日は訪れた。決行日は広宗から袁紹達が帰って来たその日、善は急げと言わん
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