閑話―猪々子― 下
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「お、おぉ……私の心の友はお主だけだ! 恋!!」
皆に一蹴されうな垂れる星を見かねたのか、恋は彼女を励まそうと声を掛ける。
心に冷たい風が吹雪いていた星は歓喜しながら立ち上がり、恋に抱きつくと同時に頬擦りした。
普段飄々としている星の変わりっぷりに皆は目を見開きつつ、桂花の進行に基づき会議を進めた。
「猪々子、貴方は何かあるかしら?」
「え、アタイ?」
とりあえず色んな案を提示させようと、桂花は何故か会議に消極的な猪々子に声を掛ける。
普段の彼女なら、このような議題には喜々として参加するのだが……
本日の猪々子は上の空、皆のやり取りを見ているだけだった。
「うーん、大食い大会とか?」
『……』
「だ、駄目か? 祭りだから盛り上が――『それだ!』わッ!?」
猪々子の何気ない提案に皆が食いつく、余りの勢いに提案した本人が椅子から転げ落ちそうになったが……そんな彼女には目もくれず、大食い大会について話し始めた。
「武芸大会のように競うことで賭け事による利益が見込めるわ」
「一般人も参加しやすいですね〜」
「宣伝になると銘打って、各地の料理人を呼び寄せられますぞ!」
「南皮でも料理人は多いですし……大会の料理以外は出店で提供するのも良いかもしれません」
「私の盟友であるメンマの料理人も呼び寄せましょう!」
「沢山……食べられる」
「そして見世物として御輿を――『却下』チッ」
「……」
発案者を他所に大会の内容が練り上げられていく、猪々子としては己の欲に従っただけの発言なので、ここまで皆の琴線に触れるとは考えておらず目を白黒させていた。
そして冒頭に戻る。
「それでは、本大会の注目選手達の入場です!」
開かれた大食い大会には多数の参加者が集っている。出場するのに資格や決まりなど無く、武芸大会よりも参加のハードルが低いことが幸いしたようだ。
しかし百人に及ぶ参加者達を管理するのは難しい。そのため、一般の参加者達は広場の簡易食卓に、司会者が呼ぶ注目選手――所謂『優勝候補』と目される者達は急遽設置された高台の上で大会に参加することになった。
「まずは一人目、『その食い意地は袁家一?』皆さんご存知文醜様ーー!!」
「やってやるぜ!」
『うおおおおおおおおおお!!』
司会者の微妙な紹介と共に現れた優勝候補の一角、猪々子。
ここ南皮の住民であれば彼女大食いは常識である。食欲旺盛な猪々子は良く街で食事しているのだ。それも袁家での食後にである。
袁紹は家臣たちと共に食事をすることを好む、その中において猪々子の大食いに配慮し。彼女の食事は数倍の量を出されるのだが―――
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