トワノクウ
第三十三夜 千一夜(一)
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いの死体を操って見せた。もしかしたら、それは『夜行という人と妖に共通の敵』を演じて、両方を協力関係にするための演出だったんじゃないかって。ずっと、そう思えてならなかったんです」
明は目をぱちくりさせて、くうを見つめ返している。
「――すっごい。全部正解よ、それ。襲撃のタイミングからそこまで推理したの?」
「しちゃい、ました。その、すみません」
「謝ることなんてないよ。分かってくれる人がいたってだけで、とても救われる。それもそれが自分の姪ならなおさらね」
明は自身を抱き、憐れめいた笑みを浮かべた。
「そんな君に、私は君が背負わされたもののことを告げないといけないのね」
憫笑したまま明はその言葉を、告げた。
「君はあまつきを救うために、いえ、鴇時さんひとりを救うためだけに作られて、この世に産み落とされた。もしお兄ちゃんと萌黄さんで鴇時さんを救うのが間に合わなかった、その場合のために。この意味、聡い君なら理解できるでしょ?」
頭のてっぺんから足の爪先まで、その意味が浸透していく。四肢の機能が麻痺していく。
「君の親は――お兄ちゃんと萌黄さんは、君を作った時点では君にそれ以外の働きを求めなかったの。勉強に励むことも家の手伝いをすることも友達と仲良くすることも、たった一つ期待した結果を出せないなら、二人にとっては無意味の無価値でしかないんだから。そういう捉え方では、君の名は本当に体を現してる。空虚――ひとつ以外の意味を持たされなかった君に」
くうは立っていられずその場に崩れ落ちた。
明は瞼を伏せ、いつのまにかくうの手から消えていた鈴を、手に持って鳴らした。
すると、くうに歩み寄ってくる足が、ひらりと揺れるスカートの裾とストールが、長い黒髪が、胴が、胸が形成されていった。
くうの前にその人が立った時には、その人物は完全に全体像を成していた。
「お母さん……」
歳を経てなお若い女性のような容貌の母が、くうを悲しげに見下ろしていた。
なぜ今ここに母がいるのか。ホログラムなのか、本人なのか。なぜあまつきに入れたのか。
疑問はいくつも浮かんだが、くうにとってそれらは口に上るほどではなかった。
聞きたいのは、たった今知った真実の裏側。
「私を産んだのは、鴇先生のため?」
搾り出した声が震える。
「鴇先生のこと以外でしてきたことは、全部無駄?」
薫と過ごした「友達」の時間。
潤と会って知った恋の楽しさ。
楽研の仲間と重ねた
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