トワノクウ
深夜 胸に抱けばみどりごは
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――約束する。俺がなんとかしてやる。
鴇が帝天になった直後、ほんの少しだけ会話できる時間があって、俺はあいつにそう言った。
彼岸に――現実世界に戻った俺は、自分が持てる限りの知識と頭脳、金とコネを注ぎ込んで、一つのソースコードを作り上げた。
雨夜之月≠維持するために眠る鴇を覚醒させ、かつ雨夜之月≠煖@能停止させないもの。
とまあ、字面だけは万能だが、このソースコードは誰にとっても――あいつの家族と友人たちにとっても、それこそ俺にとっても、不本意な結果しか招かなかった。
目覚めた鴇は、中身がなかったんだ。
「君は――誰?」
それは記憶喪失なんて可愛いもんじゃなかった。今までの人生全て忘れただけに留まらず、六合鴇時≠チて人格まで綺麗さっぱり白紙になってやがった。
それでも、俺も、そして俺に協力することになった萌黄さんも、手を止めたりはしなかった。
逆に、そのソースコードを完璧に仕上げることに没頭した。
だってのに、歳月だけはいやに早く過ぎていって。
俺も萌黄さんも成果の出ない状態に焦れてたんだ。
このまま一生、鴇を助け出せなかったら?
想像したとたんに怖くなった。
それは萌黄さんも同じだったようだ。彼女も俺と同じ結論に達していた。
俺達が成し得なかった時に、代わりに後を継いでくれる者を『作る』。
俺達は合意の上で肉体関係を持った。
俺はともかく、萌黄さんは年齢が年齢だけに不安は大きかった。いくら漆原の実験のために冷凍睡眠で歳をとらなかったとはいえ。
無理だったらそれはそれで納得するつもりだった。
――だが、そんな消極的な考えを糾弾するように、『それ』は俺達の許にやって来た。
萌黄さんは見事に妊娠した。
萌黄さんが臨月を迎えて入院した産院が火事に遭った。
そのニュースを知った俺は、とにかく産院へ急いだ。
そんな無謀する質でもねえくせに、野次馬を掻き分けて、燃える産院に飛び込んで、萌黄さんの病室へ走った。
ベッドの下に隠れて気を失ってた萌黄さんを見つけて、抱え上げて逆走しようとした。
でも、火の手の周りは早く、結局は階段を半階降りて動けなくなった。
俺は萌黄さんを起こさないよう、なるべく静かにキスして、その場で座り込んだ。
――きっと罰が当たったんだな。道具にするためだけに子供を産もうなんて考えた俺達を、この子と神様とやらは許さなかったんだろう。
らしくねえか。まあ、最期くらい、いいだろう。
なんて思って。右腕に萌黄さんを、左手で腹の中の子供を抱いて、本気でそこで死を迎える覚悟をしたんだ。
「ごめん、なさい」
「! あ
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