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逆さの砂時計
魔窟の森 1
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らも、後々アリアに封印されてしまうような悪魔だ。
 神々と一戦交えるなどは、していなかったのだろう。

「もしかして、お主、……雑魚……?」
「殺す」

 哀れなものを見てしまった目で口元を押さえるリーシェに。
 袖をまくって威嚇(いかく)する大人げないベゼドラ。

「おやめなさい、ベゼドラ」

 クロスツェルも同じことを考えてしまったが、胸の奥にそっとしまう。

「人間。お前からも、わずかだが天神(てんじん)の一族の力を感じるな」
「?」

 クロスツェルが自らを指して私ですか? と、目を瞬かせた。

「一族の力を帯びている人間がここを訪れたのは、聖天女以降、初めてだ。通りすがりと言ったな、悪魔よ」
「ああ。俺達はアリアを捜して旅をしてるだけだ。アリアと関係ないなら、ここに用は無い」

 エルフは、袖を戻して腕を組んだベゼドラに向き直る。

「であれば、この先へはお前だけで行くがいい。人間は通さないが、悪魔を我らの里に入れるなど、考えるだけでも汚らわしい」
「断る、と言ったら?」
「この場で人間の首を落とす」
「ほおー。なら、大人しく従ったら? クロスツェルをどうする?」
「我らが長に会わせて、判断を仰ぐ。この人間は他と違う。放置できない」

 エルフ達がクロスツェルの両腕を捕まえて、動きを封じる。
 その光景に、ベゼドラが「ぶふぅっ!」と噴き出した。

「なんだったか。保父? みたいだな。クロスツェル」

 身長差がありすぎて、子供にたかられている保護者に見えたらしい。
 よく分からないがバカにされたようだと、エルフ達が不機嫌になった。

「弱りましたね。私はまだ死ねませんし、ベゼドラが居ないと困ります」
「我らの知ったことではない」
「通りすがりの私達も、貴方達の事情など知ったことではありません」
「……逆らう気か」

 肩越しで睨むエルフに。
 クロスツェルは、人好きのする柔らかな笑顔を返した。


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