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逆さの砂時計
魔窟の森 1
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建てまくってるせいで、余計に俺の記憶と合致しねぇ。『北の森』ってヤツには覚えあるが、ここがそうなのかと尋かれても、入ってみなけりゃ答えようがない」
「『北の森』? どのような場所だったのですか?」
「引き籠りの集落」
「はい?」
傲慢(ごうまん)と自尊心を形にした、ほとんど全身真っ白な絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ)が身内だけで集まって作った陰険(いんけん)な場所だ」

 傲慢、自尊心、陰険?

「悪魔の集落とは珍しい」
「ケンカ売ってんなら買うぞテメェ」
「違いましたか」

 悪魔に真っ白な印象はないか、と思ったが。
 アリアと共に消えたあの男は金髪で、肌も色白だった。
 悪魔だから黒い、というわけではないようだ。

「悪魔にも陰険と言われる方々とは、いったい」

 どんな種族なのですか?
 と尋こうとして、途切れた雪道に足を止める。

 村に近い範囲には、まだ人の往来があったようだが。
 やはり、森の近辺は避けているらしい。
 膝上の高さまで積もった綺麗な雪が、二人の進行を阻んでいた。

「チッ。面倒くせえ」

 ベゼドラが先に立って雪を踏み、クロスツェルが歩ける道を作っていく。
 腐乱死体を持ち歩くのが、よほど嫌なのだろう。
 美意識、みたいなものだろうか?
 ベゼドラは、腐る物を醜悪と言って避ける傾向がある。
 豆粒で作られた発酵食品を見せた時などは、それはもう、面白いくらいに顔を歪め、全身全霊でもって激しく拒絶していた。

 発酵と腐敗は違うのだが、神代に発酵食品は無かったと聞く。
 ベゼドラにしてみれば、わざわざ見た目を悪くさせる未知の料理法。
 理解できないのは無理がなく、受け入れがたいのも仕方ないことだった。

「ありがとうございます」

 ぶつぶつ文句を言い続けるベゼドラの後に付いて、森の中へ入っていく。
 密集して生える木々の枝葉で上空が(さえぎ)られているからか。
 意外にも、森の中のほうが雪や雑草が少なくて歩きやすい。
 奥へ進めば進むほど積雪量は減り、薄暗いのに不思議と暖かく感じる。

「止まれ」

 ベゼドラが突然、クロスツェルの前に腕を伸ばして動きを止めた。
 クロスツェルが首を傾げてベゼドラの横顔を覗くと。
 彼はどこか緊張した面持ちで、周囲の木々を見回している。

「なるほどな。まだ生きてやがったのか、アイツら」
「アイツら?」
「さっき言っただろ。ここは『北の森』で間違いない」
「傲慢と自尊心を形にした絶滅危惧種が作った陰険な集落?」

 クロスツェルが、ぽそっと呟きながら頭上の枝葉を見上げた途端。

「誰が傲慢と自尊心と陰険の塊じゃと!? この無礼な不法侵入者共があ!! あ?」

 木の上でそう
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