精神の奥底
46 恐怖、憎しみ、そして安息
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彩斗とメリーは脱衣所で身に着けているものを外して籠に入れていく。
トランサーとBlackberry、トールショット、財布を籠の底に置いて、その上に服を脱いで置いていた。
そして最後に左腕のシーマスターを外す。
室内灯に照らされ、そのブルーのダイバーズベゼルが美しく輝いていた。
それと背中合わせで顔を合わせること無く、メリーは既に服を脱ぎ終わっていた。
メリーは財布と耳元を覆うくらい大きく特徴的なヘアアクセサリー、そしていつも持ち歩いている巾着袋と普段から身に着けているものも少なく、彩斗と違ってTシャツ、ジーンズを脱ぐだけだったからだ。
恥じらいながら振り返る。
「タオル…ここに置いておきます」
メリーは先に浴室に入っていった。
「……」
やはりメリーの様子はおかしかった。
それは普段からメリーを見ている人間なら誰でも分かることだ。
まして施設では同じ部屋で生活している彩斗ならば気づいて当然だった。
だが彩斗はすぐに見抜くことができなかったのだ。
いつもなら意図せずとも人の考えを読み取ってしまうシンクロが勝手に働く。
だから自発的に人の変化を気にするということが常人よりもかなり劣っているのだろう。
そんな生命活動の一部にまでなってしまったシンクロが働かなくなる程に疲労しているのだ。
「…入るよ」
ここ数日で初めてのことに多く遭遇した。
自分の事を命を掛けて守った少女との出会い。
溜め込み続けて弾けた悪意に突き動かされる感覚、そして初めての殺人。
命を拾った代償に失い、だが初めて味わった普通の人間としての感覚。
いじめで受けた暴力とは一線を画す本当に命を掛けたValkyrieとの殺し合い。
本気で相手を殺してやろうとする悪意を抱き、抱かれ、誰であっても殺意はすぐそこにあるものなのだと思い知ったのだ。
「…座って下さい。背中を流します」
「ッ…」
「どうかしましたか?」
「いや…恥ずかしくて」
「…もう…でも私の方が恥ずかしいんですよ」
彩斗はその華奢な身体をタオルで隠して顔を赤らめながら椅子に座った。
肩幅は狭く、いわゆるなで肩で腕も足もか細く、後ろから見れば女性と見間違えてしまう。
だがその体格でありながらも筋肉の作りはしっかりとしており、その絶妙なバランスがスターダストのあの戦闘センスを支えているのだった。
「僕が先でいいの?」
「だって風引いてるじゃないですか。先に流して、早く湯船に入って下さい」
「うん…」
メリーも恥ずかしがっているが、彩斗と違ってタオルで隠すことはせず、手で胸元を隠す程度だった。
メリーも痩せ型ではあるが、年齢にしては発育も良く、所々が女性的な丸みを持ち始めている。
まだまだ幼さの残る2人だが、着実に大人へと近づいていた。
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