第1話「兄妹はわけもなくケンカする」
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命火を、稀に生きながら背負う者がいる。それはまるで夜の虫を集らせる『光』のようだ、と。
人を惹きつける力――それこそ『光』が高杉にあるのだろうか。
あの人を失ってから高杉はどんどん狂気へ堕ちていったのに。毎晩必要以上に迫ってきて、夜な夜な布団の中で弄ばれた。高杉が求めていたのはいつも『破壊』だけだった。
だから、彼のもとから離れた。
『破壊』しか求めない高杉の思想についていけな……
――ちがう。
――そうじゃない。
――そこから私は……
「………」
どうして今更こんなことを思い出してしまうのか。
闇にまみれたこの倉庫街があの船に似ているせいかもしれない。
狂気と混沌が渦巻く鬼兵隊の住処に。
――くだらない。
軽蔑して頭の中の思い出を振り払う――が、やはり素直には消えてくれなかった。
ふと、ある倉庫が双葉の目に止まる。
その倉庫のシャッターに刻まれた数字は『13』
「………」
だが謎はすぐに解けた。
近づいてよく見てみると、それは数字ではなくアルファベットの『B』だった
その『B』が遠くからすれば『13』に見えなくもない。
怪談の真相なんてそんなもんだ。双葉はこのろくでもない調査をやめて、身をひるがえした。
そして奇妙な音が鳴り響く。
“カキン”
“カキン”
それは少しずつ、少しずつ聞こえてきた。
金属と金属がぶつかり合い、何度も何度も止まないリズムを刻む。
そんな音がB倉庫から聞こえてくる。
――鍛冶屋の霊……まさか……。
幽霊がいないなんて言わない。というより、前に一度『仙望郷』で本物を見ている。
この世の未練からの解放を求める何百の幽霊たちが集う温泉宿。
そのスタンドを牛耳る女将とバトルを繰り広げ、黄泉の門を通り抜けて『あの世』まで行くという尋常じゃない体験をしてきた。
それでも、『あの人』には会えなかった。
――……全く、今日はよく思い出す。
ほのかな苛立ちを感じつつ、双葉は中へ入って行った。
『狂気』と『破壊』が渦巻く倉庫へと。
=つづく=
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