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【銀桜】8.破壊狂篇
第1話「兄妹はわけもなくケンカする」
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の幽霊嫌いはヒドいもんだ。それは本物の幽霊・『スタンド』を見ても治らなかったほどで、正直呆れる。
――ま、そこが可愛いトコなんだが。
 そんな萌えポイント見たさで兄をイジった結果、一人になってしまった。とはいえ、仕事を引き受けた以上このまま調査をやめるわけにもいかない。
 双葉は夜道を歩きつづけ、やがて無数の倉庫が立ち並ぶ広場へと出た。
 大手の貿易商が営んでただけあって、どの倉庫もやたらデカく、シャッターには会社のマークがデカデカと刻まれている。まるで己の権力を見せつけているようだ。社長は温和な性格だと聞いたが、実際は相当傲慢な奴だとみえる。
 事実、その会社は裏で攘夷志士と銃器の闇取引をしていた。しかし真選組に暴かれ倒産してしまったとのことだ。
 ただ、そんなの今の双葉にとってどうでもいい話。だが属していたつもりはないとはいえ鬼兵隊にいたせいか、裏社会の余計な情報が次々と出てきてしまう。
――いらぬ知識だ。
 そう声に出さず吐き捨てる。
 鬼兵隊にいた日々。それは常に狂気と混沌が渦巻いた生活。
 あの時の暮らした日々を、組織に属していた者たちを懐かしいなんて思わない。
 そもそも鬼兵隊のメンバーは高杉の思想に共感して集まった者たちばかりで、それぞれが親しいわけじゃない。
 腐った世界を壊すという目的のために同じ場所に集った、ただそれだけの者達だ。
 だからどんな奴らが来ようと馴れ合いなんてしなかったし、しようとも思わなかった。
 高杉の隣にいられるならそれだけでよかった。
 例え優しさを失い、狂気に堕ちた彼であろうと。
――私もモノ好きだな
 だがモノ好きは一人だけじゃなかった。
 常に不気味な笑みを浮かべ、使えない駒は容赦なく捨てる残忍な性格は、見るからに人を寄せ付けがたい……はずなのに高杉の周りにはいつもたくさんの人々がいた。
 それは鬼兵隊のメンバーが思想に共感しただけでなく、高杉自身に惹かれ慕っているからだ。
 特に来島また子は心から心酔し、文字通り惚れていた。
 だから自分のことは相当気に入らなかっただろう。いつも彼の隣にいられる女を目の仇だと言わんばかりに睨みつけ、何度も挑発してきた。間近で弾丸を放たれた事さえあったが、そんなの相手にしなかった。
 しかしあそこまで妬まれるのは、それだけアイツが愛されてる証拠だ。
 どうして皆、高杉に惹かれるのだろう。
 幕府も恐れる過激な行動と他の攘夷浪士にはないカリスマ性が惹きつけるのだろうか。
 だがそれなら人斬りと音楽プロデューサーの二つの顔を併せ持つ河上万斉も同じと言える。河上にもそれ相応のカリスマ性があり、そこに人が集い組織が築かれたって不思議じゃない。だが、彼もまた高杉に仕えている者だ。
 あの男……似蔵はこう言っていた。人間が息絶える時に放つ
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