第1話「兄妹はわけもなくケンカする」
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今のは冗談で返したつもりだったが、銀時はまだ子供じみた言い訳をやめない。
それどころかさっきより見栄っ張りな言動が増えている。どうやら本気でビビっているらしい兄に、双葉は呆れて溜息をつく。
「たんに不良どもが暴れてるだけかもしれないぞ。ただでさえ治安が悪いからな、ここは」
大人達の管理を嫌う不良達にとって、誰もよりつかない廃倉庫は自由に過ごせる最高の溜まり場だ。毎晩ここで夜遊びしているなら、彼らを追い出せばいいだけだ。
しかしそう思って調査を始めて1時間ほど経つが、物音も不良達の姿も見当たらない。
あるとすればだんだん周囲がおどろおどろしい雰囲気になっていることだ。
錆びついた鉄の臭さに溢れた倉庫街は陰険な空気が漂い、いかにも何かが出てきそうな場所である。
「……で、兄者」
「ん?」
「なんだこの手は」
無愛想に指摘されるのは、橙色の甚平をギュッと掴む銀時の手。
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「こ、これはアレだよアレ。オメェが迷子にならないように掴んでやってるだけだから」
「離せ、シワになる」
「こここ怖いとかそんなんじゃねェからな」
「背中に桜吹雪装飾の甚平1着」
無表情に新着をおねだりされても、銀時の手は服を掴みっぱなしだ。
「少しは慣れろ。成長しろ」
「成長しなくたってな、イザという時キラめければそれでいーんだよ。それに俺はもう色んな悲しみ乗り越えて立派な大人になってんだから、これ以上成長するこたねーの。だいたいよォ、これ以上成長してどうすんだ。どこに行くってんだ。俺は今のままが一番だ」
――向上心ゼロか。
兄の真意を悟った双葉は胸中で呟いた。横目で冷めた視線を飛ばすが、銀時は手を離さない。
別にこのまま掴まれてたってかまわない。――が、こーゆう兄を見るとどうにもS心が働いてしまう。
「そういえば兄者。こんな話を知ってるか」
「あ?なんだよいきなり」
その時、双葉の口元にうっすら黒い笑みがこぼれたのは気のせいか。
戸惑う兄をよそに妹はわざとらしく暗い口調で語り始めた。
「ここはかつて鍛冶屋があった場所なんだが、ある商人に買収され店を潰されたそうだ。おまけに廃刀令のせいで刀を造ることも許されなくなったその鍛冶屋は、生き甲斐をなくし自ら命を絶った」
「おいおいおいおい双葉。おおお前一体何話してんの〜」
「ここには数えて12個しか倉庫はない。だがな、夜になると1つ増えるそうだ」
「ちょっとちょっと何それ。そんな話今するこたねーだろ」
「あるはずのない第13倉庫。そこから聞こえるのは刀を叩きつける男の嘆き声。それはおそらく――ん?」
話の結末を語ろうとしたとき、すでに銀時の姿はなかった。いつの間にかどっかにすっ飛んで行ってしまったらしい。
昔からだが、兄
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