第1話「兄妹はわけもなくケンカする」
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廃れた建物に一つの『影』が蠢いていた。
『影』は古びた機械を愛おしそうに眺めて――壊す。
銀色の棒をクルクル回して壊す。
回し回され機械は崩壊する。
『影』はまた壊す。
錆びた物体を見つけるたび、喜びに満ちた表情で。
姿、形、が消えてしまうまで。
だから『影』の周りには何も残らない。
「…悲しい……悲しい話をしよう……」
『影』は嘆く。
罪悪感のもとで、狂った笑みを浮かべながら。
* * *
真っ暗な夜の倉庫街に二つの人影があった。
暗闇でも銀にきらめく輝きを分け合ったかのような銀髪の兄妹――銀時と双葉である。
今二人はとある依頼で港の廃倉庫を歩きまわっていた。
息も凍るほど寒い夜にわざわざ出歩くのは、使われていないはずの廃倉庫から物音や人の声が毎晩のように聞こえてきて、その正体を調べて欲しいと頼まれたからである。
「たくよォ。なんでこんなさみー中で歩かなきゃいけねェんだよ。ゼックションっ!ヤベェヤベェ風邪引きそうだなコノヤロー」
やまない愚痴を半開きの目でグダグダ言い続けるのは坂田銀時だ。半目はいつもだが眠そうにあくびをしてる仕草が加わると、よりだらしなさが目立ってくる。
「マジねみーんだよ勘弁してくれよ。銀さんここんとこ寝てねーんだよ」
疲労感が混ざったダルそうな低い声でダラダラと言う様はどうも年寄り臭い。
寝ぼけ気味の瞳に気だるそうな仕草は傍目からすると甲斐性なしの駄目男。だがこれでも彼は『万事屋銀ちゃん』という一つの会社を経営している社長である!……といえば聞こえは良いが、常に収入不安定で生活が苦しいのが現実だ。
配達作業や大工仕事などあらゆる仕事が舞いこんできても収入が安定しないのは、依頼主によって報酬の落差が激しいせいだ。おまけにここ数週間仕事が来なくてかなりヤバかった。しかし久しぶりのこの仕事を終えればなんとか今月はしのげそうである。
ただできれば調査は浮気や人捜しだけにして欲しい。しかし最近なぜか『こーゆう系』が多い。
「つーか前にもこんな依頼あったよな。たく、なんでいっつもこーゆう系なんだよ。俺らは万事屋でゴーストバスターズじゃねェっての」
後ろでブツブツ愚痴る銀時の文句を耳にしながら、双葉は懐中電灯を手に倉庫街を歩く。
「兄者は幽霊の仕業と言いたいのか」
「ち、ちげーよバカッ!誰がオバケつった!?俺全然そんなこと思ってないからね。そうじゃなくて俺はガキくさいビームぶっ放すゴーストバスターズより、呪文唱えてお札投げてやっつける陰陽師になりてーってことだよ。ほらアレだ、結野アナみてーな」
「そうか。なら悪霊退治は兄者にまかせた」
言い訳がましいことを飛ばす中で滑らせた一言が、今度は双葉を不機嫌にさせた。
といっても
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