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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
ニ十三話 破壊の宿業 [壱]
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ラナの頭の中を満たした疑問があった。
あの一撃を、ジークに撃たせてしまって良いのだろうか?
もう一度、今のジークを見る。
一切の躊躇いも無く母熊へと放たれる彼女の一撃は、間違いなく、今母熊のごく近くにいる小熊も巻き込むだろう。彼女は自分が命がけで守ろうとした命を、ほんの数十秒しか経っていない先の未来であるこの瞬間に、自らの手で消し去ろうとしてるのだ。
『ダメだ……!』
クラナは、確信した。例え今の彼女が自らの意思で動いているにせよそうでないにせよ、あの一撃を撃たせてしまったら確実に彼女は自らの行いを後悔する。ましてもしも本心からの行動でないとしたら、その後悔は確実に彼女の心を引き裂いてしまうだろう。だから……
「やめろッ、“ジーク”!!」
「……殲撃(ガイスト・ナーゲル)……」
だからクラナは、母熊のジークの間に走り込んだ。
くしくも、クラナが母熊の前にたどり着くのと、ジークの一撃が放たれたのは、全くの同時だった。
眼前に迫る破壊の爪が、自らの視界を覆い尽くそうとする。回避できない。防御も恐らくは持たないだろう。
威力は先程の事で分かっている。人間の身体が耐えられるような一撃では無い。
『死…………!』
その黒光の一撃が、クラナの四肢をバラバラに引き裂こうと迫り……
──喰ラエ──
直後、視界が真っ白になった。
────
「…………!」
ハッと、ジークリンデ・エレミアは自我を取り戻した。
自分は何をしていた?その問いに答える者はいないが、たどった記憶が答えを示してくれる。そうだ。確か異様な姿に変わった母熊が小熊を殺そうとして……自分が吹き飛ばされた所までは覚えている。
『クラナくん……っ!?』
視界を広げて周囲を見回そうとして、ジークはガクンと、膝を付いた。身体に、力が入らないのだ。
「くっ……」
理由は分からなかったが今はそんな事を気にしている場合では無い。何とか手を付きひざまづいて、ジークは周囲を見渡す。
“それ”は、すぐに見つかった……いや、見つかってしまった。
「…………ぁ」
10m程向こうの河原に、人が倒れていた。傍らには一匹の母熊と小熊も倒れている。血の海に沈んだその人影は、間違いなく昨日出会ったばかりの少年、クラナ・ディリフスだった。
「ぁ……いやや……」
そんなつもりは無かった。ジークが初めに思ったのはそんな言い訳じみた一言だった。だが其れが何の弁解にもならないことを、彼女はよく知っている。およそ自分が何をしたのかも含めて、ジークには容易に想像が付いた。
“また”だ。“また”自分はやってしまったのだ。望まぬ力。破壊の爪は結局、自分にとっての大切とそうでない物を区別してはくれないらしい。
「嫌やぁ……!」
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