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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
ニ十三話 破壊の宿業  [壱]
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後方から放たれている。
振り向くことすら恐ろしく、迫りくる彼女にすら眼もくれず、ただただ無意識の内に“頭を下げた”。

破壊が、つい先ほどまでクラナの頭があった場所を通過する。

「……ガイスト・クヴァール……」
黒い爪をもつ其れが左腕を振るった瞬間、ブシッとまるで水入りの袋をねじり切ったような音がした。およそ小さなその音の結果は、何よりも分かりやすい光景で、クラナの前に示されている。巨大な熊の右前脚が、付け根から抉り取られ、綺麗に消失していたからだ。

「ギュアアァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!」
まるで壊れたスピーカーのように、彼女の悲鳴が周囲に響き渡り、引きちぎられたような腕の断面から噴水のような勢いで紅色の液体がまき散らされる。バランスを崩した身体が横転し、彼女はもがきながら地面に倒れ伏した。
駆け抜けたままの姿勢から、ジークがゆっくりと此方を向く。
あらゆる感情が抜け落ちたような無表情と、同時に全てを冷淡に見据えるその視線を見た瞬間、クラナの背筋に冷たい物が走った。母熊の腕を引き裂いた歳の帰り血が身体や頬に付いたその姿は恐ろしくもあり、同時に何処か薄ら寒いほどの美しさを兼ね備えている……。

「ジーク……さん……?」
[これは、一体……]
ジークの右腕からは、黒い魔力光がゆらゆらと立ち昇っている、まるで亡霊の爪のようだと、クラナは直感的にそう思った。

「…………」
振り向いたジークが大ぶりな構えを取る。明らかな大技の気配……動きを封じた上で叩き込む事で、確実にとどめを刺すつもりだ。恐らくは、確実にあの大熊の命を消し去る為に。

「……っ!」
だがその瞬間、クラナは気が付いた。ジークと共に吹き飛ばされた小熊が、トテトテと大熊の方へと走って行く。やはりあの熊は母熊なのだ。何故あんな風になってしまったのかは分からないが、小熊には其れが分かるのだろう。
思わず、クラナはジークを見る。ジークが技を止める気配は無い。小熊が見えていない……?いや、そもそも小熊を認識していないのだ。今ジークの視界には、自らが(ころ)すべき対象である母熊しか入って居ない。そう一瞬の内ではっきりと理解してしまうほど、無表情に、無慈悲に、ジークは振りあげた腕を振り下ろそうとして居た。まるで彼女の身体が自動的に、脅威を排除しているかのようだ。
その刹那、クラナの頭に、先程の少女の穏やかな笑顔と、言葉がよぎった。

『こわがらんでええよ。この子とこの子のお母さん、ウチの友達やから』
今のジークが普通でないのは、どんなにクラナが鈍くても理解出来る。あの殺戮以外に使い方の見えない異様な魔法戦技といい、一切の揺らぎすら認められない冷淡さといい、今までクラナが見て来たジークとは付合しない点が多すぎる。だがそんな物のどれよりも、今ク
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