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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
ニ十三話 破壊の宿業 [壱]
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あくまでも一瞬だった。
「……すみません、でも……」
「しょうがないなぁ……」
クラナもまた、今起こったことを注視するのを止める。目を逸らして、その一瞬の判断で、発生した事実から逃げた。その事実を注視してしまったら、今すべきことに向けて歩けなくなってしまう、その確信があったからだ。
そして苦しくもそれはなのはの想いに近い感情であった。
「分かった、でも、戻ってきたらちゃんと検査を受けなきゃだめだよ?」
なのはもまた、今起きた事実をこの瞬間に注視する事を放棄した。いや、注視する勇気が無かったと言うのが正しい。動揺したまま其れを注視してしまえば、それ以上一歩も前に出る勇気が出無くなってしまうようなそんな気がして……目を逸らす。
「は、はいっ」
「……気を付けてね」
「ッ!」
言われるが早いが、クラナは何とか立った脚を叱咤して病室から飛び出す。走り出してから入院服であることに気が付いたが、そんな事に構っていられない。
「(ジークさんっ……!)」
今はただ彼女の元へ。クラナはそのことだけを、まるで没頭するように考えていた。
……まるで、其処にだけを目を向ける事で、他の事から目を逸らそうとするように。
────
「……ふふ、クラナが女の子と、かぁ……」
少女の為に走るとは、まるでおとぎ話の勇者のようだ。そんな風に思いながら、息子の健全な成長を感じてなのはは病室の椅子に座る。
『あんな必死な顔のクラナ久しぶり……ほんとに大切な娘なんだろうな……』
小さく微笑みながら天井を見て……まるで思いだしたように、彼女は小さな声で言った。
「……突き飛ばされちゃった……」
何処か茫然とした様子でそんな事を言う。
母親ぶって送り出したが、実際は送り出したのではない、遠ざけたのだ。あのまま自分と息子の間に流れる空気が変わってしまう事が怖すぎたから、彼の目的を推し、遠ざける事で時間の緩衝剤を作った。自分の為の行動だ、なんて……
「卑怯だね……私……」
[No.]
小さく、自嘲気味に言った言葉に、傍らの紅い愛機が即座に反応した。言葉はそれだけだったが、はっきりとした否定の言葉が彼女の意見の全てを示している。
「うん……ありがとう、レイジングハート」
もう十年以上、自らの傍らで自分を支え続けてくれる相棒を愛おしげに指先でなでて、なのはは立ち上がると大きく伸びをする。
「さあって!それじゃあもうちょっとだけ、クラナのお手伝いをしようかな!手伝ってくれる?レイジングハート!」
[All right.]
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