28部分:第二十八章
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「場所は見えないけれど」
「場所を動いていないのなら」
互いの気配を探りながらの言葉だった。
そしてだった。お互いのいた方角を見たのだ。見えずともである。
「行くわ」
「行かせてもらいます」
互いに左右に動いた。沙耶香は左に、速水は右にであった。それぞれ数歩流れる様に動いた。そのうえで二人は背中合わせになったのである。
「やはりそこにいたのね」
「当たりでしたね」
背中合わせになりながら言い合う。
「それなら好都合ね」
「ええ。しかしこれは」
「これは?」
速水の言葉に応える。そうして背中合わせになっているその彼を横目で一瞥してそのうえで彼に対して問う言葉をかけたのである。
「何かあるのかしら」
「ええ。貴女と背中合わせというのは」
「いいというのね」
「はい。中々機会がありませんので」
彼の声は楽しむものだった。
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