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逆さの砂時計
それゆけ! べぜどらくん。
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 街灯がぽつぽつと光り出す夕闇の中、街を護る大門に背中を預けて立つ。

 くだらない。
 実にくだらなくて、とんでもなく面倒くさいことをさせられた。
 人間の生活ってヤツは、なんて不便なんだ。
 などと愚痴を溢している間に、クロスツェルと少女が一緒に現れた。

「お疲れ様です、ベゼドラ」
「ケッ」

 ベゼドラが、微笑む元神父の胸に報酬入りの茶封筒を投げつけると。
 それを手に取ったクロスツェルは中身の確認もせず。
 少女にまるごと手渡した。

「……本当に、良いの……?」

 少女は戸惑いながら、ベゼドラとクロスツェルの顔を交互に見つめる。

「良いのですよ。その代わり、明日もリリンに会わせてくださいね」

 俺の意思はまるっと無視かよ。
 と睨むベゼドラをかわして微笑むクロスツェルに。
 少女は瞳を輝かせて抱きついた。

「ありがとう……! リリンを助けてくれてありがとう! お兄ちゃんも、お金をくれてありがとう!」

 少女はベゼドラにも駆け寄って、その足にぎゅうっと抱きつく。
 意外にも、ベゼドラは蹴飛ばしたり突き放したりしない。

「ウザい、とは言わないのですね?」
「誰かさんのワガママのせいで疲れただけだ」

 涙を浮かべて喜ぶ少女は、急ぎリリンを預けた病院へ戻っていった。
 どうやら、クロスツェルが前金を支払って医師に診せたらしい。

「どうでしたか? 初めてのお仕事は」
「疲れる、鬱陶しい、うるさい、むかつく、面倒くさい、二度目は断る」

 躊躇(ちゅうちょ)なくポンポン飛び出す文句に、クロスツェルが苦笑すると。

「だが、飯は旨い」

 最後に思いがけない言葉が飛び出した。
 クロスツェルは目を丸くして。
 それから、くすくすと楽しげに笑う。

 昼食に出された卵焼き入りのサンドイッチは。
 この日以降、ベゼドラの好物になった。



 翌日の朝。

「はい、お兄ちゃん!」
「やあ、リリン。すっかり元気になったみたいですね」

 病院の入り口の前には、和やかに笑い合う医師と少女とクロスツェル。
 そして、狐狸(こり)に化かされたような顔で呆然と立ち尽くすベゼドラが居た。

「いやあ、クロスツェルさんが来てくれて良かった。いろいろと目が覚めた思いだよ。今日から頑張ってくれな。レネ、リリン」

 白い診察服を着ている金髪碧目の男性医師が。
 同じく、おろしたての診察服を着た少女の肩をポンと叩く。

「うん……! あっ、じゃなかった、はい! よろしくお願いしますっ! 一緒に頑張ろうね、リリン!」

 少女はリリンの真っ白で小さな体を抱え、元気いっぱいに笑う。
 リリンは、少女と同じ金色のくりくりとした目をベゼ
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